昭和特撮「人造人間キカイダー」「キカイダー01」~1972-1974 ”不完全な良心回路”の石ノ森ヒーロー

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「仮面ライダーV3」「ロボット刑事」「サイボーグ009」に続き、今回は石ノ森章太郎先生原作の萬画および特撮番組「人造人間キカイダー」とその続編「キカイダー01」(1972~1974)をご紹介します!

 

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キカイダーとは?

 

「人造人間キカイダー」は、仮面ライダーシリーズと同じ石ノ森章太郎&東映のタッグで創られた特撮ヒーローです。大筋のストーリーはTV、萬画ともに共通ですが、萬画版クライマックスの壮絶な展開はある種の伝説ともなっています。

 

「善」と「悪」の狭間で苦悩し成長する、左右非対称のデザインの主人公「キカイダー(ジロー)」と、番組後半に登場するアンチヒーロー「ハカイダー」、続編「キカイダー01」、女性ヒーロー「ビジンダー」などのキャラクターは、後の特撮番組に大きな影響を与えました。

 

日本ではあまり知られていませんが本作はハワイで異様な人気を誇り、2002年に4月12日が「ジェネレーション・キカイダー・デイ」に、2007年に5月19日が「キカイダー・ブラザーズ・デイ」に制定されています>詳しくはコチラ

 

2001年にはTVアニメ「人造人間キカイダー THE ANIMATION」が放送され、2014年には実写版新作映画「キカイダーREBOOT」が公開されるなど、21世紀になってからもリメイクやスピンオフ作品が数多く生まれています。

 

*石ノ森は当時「石森」表記
*マンガは石ノ森先生提唱の萬画表記


 

■萬画版「人造人間キカイダー」

 

石森章太郎原作/ひおあきら、土山芳樹、細井雄二、山田ゴロ作画
週刊少年サンデー 1972年第30号~1974年第13号に連載
秋田書店サンデーコミックス全6巻

 

連載当時、石ノ森先生は「イナズマン」の執筆で忙しく、作画は殆どがアシスタントの手によるものです。(萬画版ではイナズマンとも後に共演しています)。童話「ピノキオ」を物語の下敷きとし、TV版に比べよりハードかつシリアスな内容となっています。

 

特に終盤、キカイダーの兄弟がハカイダーに改造され、キカイダーが兄弟同士の殺し合いをする場面や、全てに決着を付け去ってゆくジローが絵本「ピノキオ」の最後のページを見て「だが…ピノキオは人間になって本当に幸せになれたのだろうか…?」とつぶやくシーンは有名です。

 

2001年に放映されたTVアニメ版「人造人間キカイダー THE ANIMATION」はこの萬画原作をアニメ化した作品です。


 

■TV特撮版「人造人間キカイダー」

土曜 20:00 – 20:30(30分)
1972年7月8日 – 1973年5月5日
全43話
NET、東映
出演:伴大介、水の江じゅん、安藤三男、真山譲次ほか。

 

〇打倒!ドリフターズ

 

1972年当時、土曜日20時~21時のゴールデンタイムはTBS「8時だョ!全員集合」が平均視聴率27%の”お化け番組”と呼ばれていました。この”ドリフ人気”に対抗する策として、NET(日本教育テレビ、後のテレビ朝日)はこの時間帯を”変身大会”と銘打ち、前半の20時~20時30分を東映製作の変身ヒーロー、後半の20時30分~21時を東映動画制作のアニメヒーローを放映することを決定します。

 

後半は永井豪氏原作の「デビルマン」に決まり、前半30分の作品は人気絶頂の「仮面ライダー」の実績から石ノ森章太郎氏に依頼がかかります。

 

石ノ森氏と平山亨氏、吉川進氏らによって「アンドロイドエンゼルサタン」「人造人間レッドブルー」という企画案を経て、「人造人間ゼロダイバー」で決定し、児童誌などで告知が始まりますが、テレビ局側から「視聴率ゼロにダイブするのはいかがなものか」というツッコミが入り、再協議。結局、石ノ森氏の発案で「人造人間キカイダー」に決まりました。

 

視聴率はドリフの裏番組ということで初回は9%と苦戦しますが、第1クール終了時には16%まで上昇。お化け番組への対抗作としては上出来で、続編「キカイダー01」の制作が決定しました。

この時代の「土曜夜の子ども番組」についてはコチラ

 


 

〇TV特撮版「キカイダー」の特長

 

原作同様、人のように善悪を判断する「良心回路」が物語の主軸です。伴大介さん演じる主人公のジロー(キカイダー)は不完全な良心回路によって「善」と「悪」の間で揺れ動き、苦悩しながら戦い続けます。

悪の秘密結社「ダーク」の首領、プロフェッサー・ギルの奏でる笛の音で頭を抱えて苦しむ姿は、当時のちびっこに衝撃を与えました。ギルを演じた東映の悪役俳優 安藤三男氏の形相は恐怖でした。

我々の記憶に刷り込まれている印象的な「ギルの笛の音」は当時、日本では珍しいシンセサイザー「ミニモーグ」によるもので、渡辺宙明氏のセンスが光ります。

 

当時のヒーロー番組のスタンダードである「一話完結」で「勧善懲悪」というスタイルをとりつつ、脚本家の伊上勝氏や長坂秀佳氏の手により「正義と悪の狭間で苦悩する人造人間」というテーマを漫画版以上に突き詰めたストーリー、として高く評価されています。

 

そして後半から登場する敵役の「ハカイダー(サブロー)」が予想外の大人気となり、さらなる盛り上がりをみせました。

 


 

■TV特撮続編「キカイダー01」

土曜 20:00 – 20:30(30分)
1973年5月12日 – 1974年3月30日
全46話
出演:池田駿介、隅田和世、五島義秀ほか

 

1973年の年明け早々に決定した続編は、前作ジロー(キカイダー)の兄、イチローが主人公の「キカイダー01」となります。

 

前作の主人公ジローが暗く、悩み多き青年であったのに対し、本作のイチローは明るく勇敢な、オーソドックスなヒーローとして描かれました(イチロー役の池田俊介さんは「帰ってきたウルトラマン」(1971)の防衛隊MATで主人公を優しく見守る兄貴分として人気がありました)。

「不完全な良心回路」という設定はなくなり、「太陽電池」がエネルギーのヒーローでした。

 

〇ビジンダーとハカイダー

中盤に前作に引き続き出演するジロー役の伴大介さんが新番組「イナズマン」の主役に決定したため出演が減り、代わりに女性型人造人間「ビジンダー」が登場。ビジンダーの人間態マリ役にはJAC所属の志穂美悦子さんがキャスティングされました。後の長渕剛夫人である志穂美悦子さんは当時高校生。師匠の千葉真一氏の強い推薦で決定したそうです。

 

番組後半はこの「ビジンダー」と、ブラックに加えてレッド、シルバー、ブルーの「ハカイダー4人衆」の活躍も加わり、高い人気を誇ったまま番組は終了。

 

当然、次回作も検討されましたがオイルショックの影響やスポンサー料高騰によるスポンサー不足などが重なり、NETの人気企画「変身大会」番組枠自体が終了となりました。

 


 

■キャラクターデザイン

 

なんといっても本作の最大の特徴は、その左右非対称のキャラクターデザインです。

石ノ森先生によれば理科教室にある人体模型をモチーフに、「悪の赤」と「善の青」の2色カラーを発想したのだとか。ヒーローの頭部がズレていて、さらには中身が透けて見えることで「グロテスク」と反対意見も多かったそうなのですが、結果として、当時のちびっ子たちに圧倒的に支持されました。石ノ森先生ご本人曰く「自身のデザインワーク中でも1,2を争う傑作」。

半透明の中身は秋葉原でかき集めたプラモデルの部品を用い、アクションスタントで壊れてしまうため多数の交換パーツが用意されたとか。キカイダーではスーツ部分はイラストですが、01では前進にメカパーツが搭載され、技術の進歩が見られます。

 

いずれも目の下には石ノ森ヒーローに共通する「涙の線」が描かれ、孤独と悲哀に満ちたヒーロー像が描かれています。

 


 

■ギターのジロー、トランペットのイチロー

ジローはギターを背負い、どこからともなく流れてくるギターの音色と共に登場します。これは日活「渡り鳥シリーズ」の小林旭さんをモチーフにしているのですね。

 

続編では楽器がトランペットに代わり、「なんでそんな高いところに」というくらいに高いエントツや丘の上からトランペットの音色と共に登場します。

 


 

■印象的なサイドカー

 

キカイダーのバイクは黄色い「サイドマシン」。01は透明パーツの「ダブルマシン」。1970年の東京モーターショーに出展されたコンセプトカー「カワサキ マッハIII500・GTスペシャル サイドカー」をベースに改造されました。乗るのが大変そうです。

 

「特撮ヒーローのバイク」についてはコチラ>

 


 

■主題歌

 

キカイダー、01共に特撮番組、アニメ番組の主題歌を多く手掛ける渡辺宙明氏による主題歌とエンディング、挿入歌やBGMも人気があり数々のサントラ盤が発売されています。

 

▼マイナー調で湿った感じの秀夕木さんが唄う
「ゴーゴー・キカイダー」
作詞:石森章太郎/作編曲:渡辺宙明/歌:秀夕木、コロムビアゆりかご会

 

▼明るく乾いたファズギターが印象的な下門真人さんが唄う
「キカイダー01」
作詞:石森章太郎/作編曲:渡辺宙明/歌:子門真人

 

主題歌にもそれぞれの特長が表れています。

 


 

■主人公のネーミング

 

キカイダー01がイチロー
キカイダーがジロー
ハカイダーがサブロー

です。

仮面ライダーV3はシロー
イナズマンがゴロー

なのです。これに気付いたのはずいぶん経ってからでした。

 

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