「デビルマン」〜1972 永井豪 衝撃のラスト・エポックメーキングな怪作

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「デビルマン」。言わずと知れた永井豪先生の名作です。TV放送を知らない若い世代でも、緑色したインパクトあるキャラクターはなんとなく知ってる、そして「あれは誰だ」の超有名な主題歌を聴いたことがある人は多いハズです。

 

この「デビルマン」は、後のSF、漫画家、アニメなどのクリエイターの多くに「影響を受けた」と公言され、漫画史上“絶対に読んでおくべき作品””日本の漫画史における傑作”に必ず挙げられる、「特別な作品」です。

 

しかし、一般的に有名なのはTVアニメ版のため、認識にギャップがあり、スゴさがよくわからない、と言われる作品でもあります。

 

それもそのハズ、多くの人が「永井豪原作漫画をアニメ化した」と理解しているのですが、正しくは、「設定を共有した漫画連載とTVアニメ放送の同時進行」。今でいうところの「メデイアミックス」作品であり、「故に、漫画版を原作と呼ぶのは誤り」なのだそうです。

 


 

●漫画版とTVアニメ版のちがい

 

漫画版は「ホラー作品」として描かれ、連載当時の購読者層が高年齢層も対象としていたことと、永井先生自身が描きたいテーマを突き詰めた結果、連載を経るごとに黙示録的になり、大河要素のある構成へと変遷していきました。

 

特に最終回にかけての怒涛かつ「鬱」でショッキングな展開は「トラウマ」と今なお語り草です。

 

一方のTVアニメ版は、脚本担当の辻真先氏がオリジナルストーリーを構成。あくまで子ども向けの原則1話完結、オーソドックスなヒーローものの体裁を取っています。

TVアニメ「デビルマン」
原作:永井豪
監督:勝間田具治 ほか
脚本:辻真先 ほか
キャラクターデザイン:小松原一男
音楽:三沢郷
アニメーション制作:東映動画
製作:NET、東映動画
放送局:NET系
放送期間:1972年7月8日 – 1973年3月31日
毎週土曜 20:30-21:00
全39話

 

ちなみにあの有名な主題歌の作詞は阿久悠さん。

「デビルイヤーは地獄耳」は良いとして、「デビルチョップはパンチ力」はいささか強引です(笑)。

「デビルマンのうた」作詞:阿久悠/作曲:三沢郷

 

鉄塔に座るエンディング「今日もどこかでデビルマン」も名曲です。こちらも作詞は阿久悠さん、作曲はピンクレディーでおなじみの都倉俊一さんです。

Devilman Ending

 


 

●「週刊少年マガジン」の時代背景

 

漫画作品が“衝撃的かつエポックメーキングな作品”となったのは、当時の掲載誌「少年マガジン」の時代背景がありました。

 

「デビルマン」は永井豪先生が自作品「魔王ダンテ」(「ぼくらマガジン」連載)をベースに、“悪魔をヒーローとした作品”として「週刊少年マガジン」1972(昭和47)年6月11日号から1973(昭和48)年6月24日号にかけて、全53話で連載。

 

この70年代前半、「週刊少年マガジン」は「巨人の星」「あしたのジョー」などの“劇画路線”の人気により読者層がどんどん高年齢化。150万部という驚異的な大部数を売り上げていました。

 

しかし1971(昭和46)年にはこれら人気作が終了、休載となり、その途端に発行部数が激減。そこで「週刊少年マガジン」は再び、子供層の取り込みを図ります。

 

「デビルマン」が連載された1972(昭和47)年はちょうどその狭間の時期。子供向けヒーローものと、高年齢の読者層にも支持されるストーリー性を両立させることができた、奇跡的なタイミングだったワケなのです。

 

当時、週刊少年誌5誌に連載を持つ超売れっ子だった永井豪先生は、少年ジャンプの「ハレンチ学園」少年チャンピオンの「あばしり一家」などの連載を終わらせてまでこの「デビルマン」に集中できる環境を作り、ギャグマンガ家からストーリーマンガ家の転身を図るべく奮闘を続けます。マガジン側も、その永井氏の熱意を受けて「過激な描写があっても、極力、そのまま掲載する」意向であったと言います。

 

それでも、さすがにメジャー少年誌なだけに、あまりに過激なシーンは編集部サイドからストップがかかることもしばしばだったそうで…そりゃそうでしょう。

 

さらにはTVアニメ終了に伴い連載も予定より早期に打ち切られそうになり、完結まで描き切りたい永井豪先生は壮大なプロットを残り10回の連載に詰め込むため、悪戦苦闘したそうです。

 

この辺りの攻防は、デビルマン創作の裏側を描いた“ノンフィクションに近いフィクション”自伝漫画「激マン」に詳しく描かれています。

 


 

●漫画作品「デビルマン」が画期的な理由

 

後年、永井豪先生自らと、多くのクリエイターによって派生作品が数多く生み出され、「影響を受けた」と言われる作品が後を絶たない程、画期的とされる点は何なのでしょうか。

 

第一に、日常と地続きに「天使」や「悪魔」といったファンタジー要素を盛り込んだ点。

 

第二に「神話」や「聖書」からの引用を、大胆に翻案して盛り込んだ点

 

「悪魔」を登場させる作品はそれまでもありましたが、SF的な設定をきちんと行い、「宗教(聖書)」や「神話」をストーリーに組み込んだのはこの「デビルマン」が初めてと言われます。

 

第三に「ハルマゲドン」「終末論」。

 

この1972年は連合赤軍による浅間山荘事件などが起こり、ベトナム戦争など米ソ冷戦により行き詰まった世相を反映して、永井豪先生は残虐、冷酷といった人間の「業」をこれでもかと詰め込み、トラウマ必死の「怪作」とも言われる作品に仕上げました。

 

その衝撃は大きく、永井豪先生の「師匠」である石ノ森章太郎先生は自身のライフワークである「サイボーグ009」の「天使編」の執筆に行き詰まった、とも言われる程。

 

「新世紀エヴァンゲリオン」プロデューサーの大月俊倫氏「(リアルタイムで連載を読んで)毎週、毎週、だんだん気がヘンになりそうでした」「我々の70年代安保はやっぱりデビルマン」とも発言しています。

 


 

●漫画「デビルマン」衝撃のラストとは?

 

物語が終盤に差し掛かり、人間社会は崩壊の一途を辿って行きます。

 

各国の首脳陣がデーモンに乗っ取られ核戦争が起こり、誤った情報で疑心暗鬼となり互いに殺戮を始めるなど、文字通りの「地獄絵図」。

 

主人公の不動明は親友から裏切られ、悪魔であることをTVで公表されてしまい四面楚歌に。さらにはその親友こそが、デーモンの親玉「大魔王サタン」である事を知ります。

 

明は人間同士の残虐な行為を目の当たりにして「人間はケダモノ以下だ」「デーモンが手を下すまでもなく人類は滅びる」と揺らぎます。

 

しかし、それでもたった一人、守るべき愛するヒロイン、美樹のために、と最期の戦いに挑む決意をするのですが…

 

続きは原作をご覧ください!


 

●失敗続きの映像化~DEVILMAN crybabyの公開

 

漫画版「デビルマン」が凄すぎたためか、映像化は失敗続きです。

 

そもそも同時スタートだった初代アニメ作品は除き、原作の映像化ではOVA(オリジナルビデオタイトル)は揃って未完に終わり、2004年に公開された実写映画版は「映画自体が事故」とまで酷評されました。

 

2018年、Netflixで世界同時配信されたアニメ最新作「DEVILMAN crybacy」(湯浅正明監督)は、原作を最初からラストまで描き切った初のアニメ作品。

 

舞台設定を現代に、各登場キャラクターデザインもイマドキになるなど改訂され、賛否両論を巻き起こしましたが、配信作品・成人向け作品であることから、原作の持つ衝撃性をうまく表現した傑作。私も全10話を一気に視聴してしまいました。「デビルマンとは?」の一端を知るのにオススメの作品です。

 

 


 

●「究極のヒーロー」

 

「デビルマン」はその名の通り悪魔です。同族同士の戦いで物語が始まり、気がつくと敵は人間同士になっている。「自分はなぜ生まれて、なんのために戦うのか?」という自問自答は、永井豪先生の師である石ノ森章太郎先生のお得意のテーマです。

 

「デビルマン」のスタート直前、1971年末まで週刊少年マガジンに連載されていた「仮面ライダー」もまた、悪の組織に改造された主人公が、同族と戦う物語です。

 

その後に生まれた漫画版「デビルマン」には、子ども向けヒーローもののあらゆるタブーと制約を取っ払おうとした、狂気と破壊力がありました。

正義を突き詰めれば悪となり、悪を突き詰めると正義になる、というパラドックス。

 

阿久悠先生の歌詞にもある「悪魔の力 身につけた」、“究極のヒーロー”という点が、長く支持され続ける理由なのではないでしょうか。

 


 

●おススメ単行本

 

漫画版「デビルマン」は、長年にわたって加筆修正が重ねされ、単行本もさまざまなバリエーションがあることでも知られています。

 

それぞれに良さがあるのでしょうが、おススメ、とされるのが

「デビルマン-THE FIRST- (復刻名作漫画シリーズ)」。

“永井豪画業50周年記念”として連載時の誌面に可能な限り近づけたバージョンで全3巻が刊行されています。

当時を知る「デビルマニア」な漫画ファンは口を揃えて「連載当時こそ至高」と言いますので、それが再現されたカタチです。

 

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