「トムとジェリー」~1940- スラップスティックカートゥーン不朽の名作 

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私の住んでいた福岡では、80年代、夕方の再放送時間帯に、とにかく「トムとジェリー」が月曜か金曜まで、とにかく繰り返し繰り返し再放送されていました。

 

「再放送ヘビーローテ番組」は地方によって異なるみたいで、大阪の親戚の家に行くといつも「仮面ライダー(しかも1号)」と「妖怪人間ベム」。地域によっては「トムとジェリー」にあまり馴染みのない方もいるのかも?

 

さてさてこの「トムとジェリー」、いまでは知らない人はいない有名なアメリカのアニメーションですが、あの有名なエピソードの数々はいったいいつ頃制作されたのか、とか詳しいことは意外に知らないもの。

 

そこで今回は「トムとジェリー」について調べてみました。


 

●「トムとジェリー」誕生

 

なんと初制作は1940(昭和15)年!大平洋戦争が1941(昭和16)年12月開戦ですから、想像以上に古い作品です。

 

当時人気のあったディズニーに負けじと映画会社MGMが初めて手がけたカートゥーン(アニメーション)。公開当時のタイトルは「TOM and JERRY」ではなく、トムは「ジャスパー」、ジェリーは「ジンクス」と呼ばれていたそうです(ちなみに「トム」は作中、原語では「トーマス」と呼ばれています)。

 

また、誕生当初は「子供向けテレビプログラム」ではなく「MGM制作の長編映画上映時のフィルムの架け替え時間を埋めるための短編映画作品」(そのため、1話が10分弱なのですね)であり、「大人向けの風刺モノ」という側面が強かったのだそうです。

 

1941(昭和16)年にはテレビ放送もスタートしますが、さすがのアメリカでもまだこの時期のテレビは富裕層だけのもの。

 

当時のアメリカの映画館ではテレビのない労働階級向け戦時中はプロパガンダも兼ねた「ニュース映画」が上映されていて、この「トムとジェリー」は「新聞の4コママンガ」的な立ち位置の作品だったのだそうです。

 

確かに、初期の作品をよく観察すると当時のアメリカの社会風俗の描写と共に「都会になじめず田舎に帰るジェリー」「黒人のお手伝いさん」など、数々の風刺が見受けられます。

 

また、戦時中〜戦争直後の作品と思って改めて観ると、同時期の日本と比べてアメリカの物質的豊かさは圧倒的で絶望感すらありますね。

 

暖炉のある大きな部屋、巨大なオーブンに冷蔵庫に、これまた巨大な肉の塊に牛乳ビン…そのほかにも感謝祭やクリスマス、バーベキューにハイキングなどなど、この「トムとジェリー」で知った「アメリカ文化」がたくさんありました。

 


 

●最初期がシリーズ全盛期

 

最初に制作を手がけたのはジョセフ バーベラとウィリアム ハンナという2人のアニメーター。

その後、現在に続くまで多くのクリエイターが携わり続編が作られ続けていますが、この2人が制作に携わった1940(昭和15)年から1958(昭和33)年間は「ハンナ=バーベラ期」と呼ばれ、ズバ抜けて評価が高く、シリーズの全盛期と言われているそうです。

 

実際、新しくなるにつれトムとジェリーがしゃべったり人間くさくなってちっとも面白くなくなる気がします。私が今見ても面白いと感じる、昔から好きなエピソードは、ほとんど初期の作品です。

▲トムとジェリーのキャラデザ変遷

 

それを裏付けるのが、なんとこの時期、18年間で実に13回作品がアカデミー賞にノミネート。これはディズニーやワーナーのルーニートゥーンズに比べてもズバ抜けて多く、クオリティの高さを表しています。

 

昭和20年代のアニメでフルカラーというのもスゴイですが、いまでいう「フルアニメーション」と呼ばれるなめらか過ぎる動きと、音楽との完璧なシンクロは、いま観ても衝撃的です。

 

この時期の音楽を担当した作曲家スコット ブラッドリーは、映像の細かな動きに合わせてフルオーケストラ楽曲を書き下ろし収録。クラシックやジャズなどバリエーション豊かなアレンジで「全編セリフなし」のトーキー作品の良さを際立たせていました。

 

文化の違いや時代の流れがあるにも関わらず、世代や年齢、性別を問わず、そして80年近く経ったいま見ても「何が起きているのか」がわかり「抱腹絶倒に面白い」というのは、スゴイことだと思います。

 


 

●日本での放送

 

日本での初放送は1964(昭和39)年。毎週水曜日の19:30〜20:00、TBS系列。ゴールデンタイムだったのですね。

この時制作されたのが、みなさんお馴染みのあの「仲良くケンカしな」の歌。

作詞 作曲 三木鶏郎
歌 梅木マリ&フォーコインズ

作詞作曲の三木鶏郎さんは「明るいナショナル」や「ミツワ石鹸」CMソングや、「鉄人28号」主題歌などを手がけたお方です。


 

●「真ん中の話」

 

私の観ていた再放送では、30分番組で1、3本目の「トムとジェリー」に挟まれて、2本目にトムとジェリーの出てこない“謎の真ん中のお話”が放送されていました。

 

「未来の自動車」とか「未来のテレビ」とか「ドルーピー」など。これがまたなんともシニカルで面白くて、楽しみでした。

 


 

●やたらと長い「次回予告」

 

本編がそれぞれ10分に満たず、尺もバラバラなため、最後の予告編がやたらと長いのも印象的でした。

谷幹一さん「皆さん、今日のトムとジェリー、いかがでしたか?それでは、次回のお話を時間まで、ご一緒に見ましょう〜」というナレーションと共に、日によってはほぼオチの寸前まで次回のお話が流れ、時間が来るとブチっとフェードアウトする、という仕組みでした。

 


 

●初期の傑作エピソード集!

とにかくどれも面白くて紹介するとキリがないのですが、特に評価が高い&私の好きなエピソードをいくつか…。

 

上には上がある(第1話!)

メリー・クリスマス

台所戦争

ピアノコンサート

星空の音楽会

天国と地獄

人造ネコ

南の島

勝利は我に

透明ネズミ

おかしなアヒルの子

トムさんと悪友

ヒゲも使いよう

 

【真ん中の話】

西部開拓史(ドルーピー)

ステキな自動車

へんてこなオペラ
http://www.nicovideo.jp/watch/sm81088

 


 

【番外編】

オーケストラによる生演奏とのコラボ

<関連リンク>

「トムとジェリー」②〜1948-1958 ジェリーの甥っ子「ニブルス(タフィー)」登場11作品
「トムとジェリー」③~1940- 傑作選「眠い」「眠たい」編

コメント

  1. 山口 章子 より:

    福岡市在住1962年生まれです。トムとジェリーを夕方浴びるほどに見ることができる環境だったことが人生に影響していると思っています。福岡住んでて良かったですよね。選んでいただけてる面白い作品まったくの同意見です。時代が下るに連れてトムとジェリーまったくつまらなくなって腹が立つのも同じ。真ん中の話も楽しみでしたキツネ狩りの話とか緑のこびととか

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