「松田聖子×松本隆」① 1981-1984 アイドル史上最強!のシングル15作品【前編】

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松本隆さんが松田聖子さんに詞を提供した期間は、1981年から1988年。

 

その間の聖子さんのシングルは計20曲あり、松本隆さんは「白いパラソル」から「Marrakech〜マラケッシュ〜 」まで17曲を担当。その間のアルバムは9枚あり、すべて「チャート1位」という偉業を達成しています。

 

今回はそんな松本隆×松田聖子コンビの、1981年から1984年までのシングル15作品の魅力について、主に詞の世界観に主眼を置いてご紹介します。

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1981年7月発売 6thシングル「白いパラソル」

 

 

松本隆さんが作詞した松田聖子さんの初シングルです。作曲は財津和夫さん、編曲は大村雅朗さん。

 

松本隆さんが初めて松田聖子さんに詩を提供したのは3rd.アルバム「シルエット」収録の「白い貝のブローチ」。この作曲も財津さんでした。

 

松田聖子さんはニューミュージック系の気鋭の「シンガーソングライター」が次々と起用される点が、それまでのアイドルとは違いました。

 

最初は財津和夫さんで4th.シングル「夏の扉」、5th.シングル「チェリーブラッサム」。これらの作詞は三浦徳子さんでしたが、「白いパラソル」から松本隆さんが登場します。

 

この曲のキモは

「あなたから誘って そ知らぬ顔はないわ あやふやな人ね」

の箇所でしょう。

 

こうした一見、気の強そうなセリフも、松田聖子が唄うとそうは聴こえない。

 

「風を切るディンギー」は、大滝詠一さんの「君は天然色」にも登場します。ディンギーとは1人乗りヨットのことですが、ほとんどの人は知りませんよね。でも、なんとなくその語感だけで誰もが「海沿いの景色の描写だ」と理解できてしまうのがスゴイなぁ、と思うのです。

 

1981年10月発売 7th.シングル「風立ちぬ」

 

 

作詞:松本隆さん、作曲:大滝詠一さんの“はっぴいえんどコンビ“楽曲。「大滝さん楽曲を初めてアイドルが唄った」記念すべき作品でもあります。編曲は多羅尾伴内(大瀧詠一さんの変名)、ストリングスアレンジは井上鑑さんという豪華な布陣です。

 

タイトルは堀辰雄の名作文学から。松田聖子さんを発掘したCBSソニーの若松宗雄さんの愛読書でした。若松さんは聖子さんを「音楽性と文学性で売り出す」ビジョンだったと語っておられます。聖子さんの天性の無垢な唄声は、どんな小説のヒロインでも演じられる、と考えたのでしょう。

 

大滝詠一さんは松本隆さんから聖子さんへの楽曲提供を依頼されたとき、「自分のメロディがアイドルにどこまで通用するのか試したかった」と語っています。自身のアルバム「A LONG VACATION」発売直後で、世間的に“復活“したタイミングでした。

 

●1981年10月発売 4th.アルバム「風立ちぬ」

このアルバムはA面が大滝詠一さんで、B面は財津和夫さん、杉真理さん、鈴木茂さんが楽曲を担当し、作詞はすべて松本隆さんです。A面のラスト「一千一秒物語」など、大滝詠一さんのアルバム「A LONG VACATION」と対をなす作品になっています。

 

1982年1月発売 8th.シングル「赤いスイートピー」

 

 

作詞:松本隆、作曲:呉田軽穂(ユーミン)。編曲は松任谷正隆さんです。

 

世間的には、この楽曲が松本隆×松田聖子の代表作ですね。

「春色の汽車に乗って」「雨に降られるベンチ」「線路の脇のつぼみは」「心の岸辺に咲いた」などなど、松本ワールド全開のキーワードが散りばめられていますが、中でもキモは「半年経っても あなたって手も握らない」でしょう。

 

松本隆さんは後に「80年代初頭、週刊誌で“荒れる高校生““初体験の低年齢化“などが頻繁に取り上げられ、そうした風潮やメディアに対するアンチテーゼだった」と語っています。

 

そして聖子さんはその気弱な、頼りない男性に対してあなたの生き方が好き」と唄う。こんなアイドルはいないですよね。

 

ユーミンの楽曲であることも重なり、この楽曲から松田聖子さんは女性からの支持も増えて行きました。

 

1982年4月発売 9th.シングル「渚のバルコニー」

 

 

作詞:松本隆、作曲:呉田軽穂(ユーミン)。編曲は松任谷正隆さんです。

 

前作とは打って変わって舞台が夏、それもリゾートです。ヒロインも「渚のバルコニーで待ってて」「そして秘密」「キスしてもいいのよ」などと、アグレッシブ。

 

この曲のキモは「馬鹿ね 呼んでも無駄よ 水着持ってない」ですね。当時、アイドルが「馬鹿ね」はいかがなものか、だったでしょう(今でも勇気が要ります)でも、聖子ちゃんの唄声のチカラで、まったく問題になりませんでした。

 

リゾートが舞台、で言えば80年代のヤングカルチャーを見事に先取りしたユーミンの名盤「SURF&SNOW」(1980年12月発売)の流れを汲んでいます。70年代から80年代に変わり、普通の人々にも「豊かな暮らし」が到達。春や秋は高原、夏は海、南の島、冬はスキーやスノボ、といった「リゾート」が身近なものになりました。

 

聖子さんはユーミンからその舞台を与えられ、男性のみならず同世代の女性も憧れる物語のヒロインになって行くのです。

 

1982年7月発売 10th.シングル「小麦色のマーメイド」

 

 

そんなリゾートが舞台の一つの到達点と言えるのが本作。3作連続で作詞:松本隆、作曲:呉田軽穂コンビ+編曲:松任谷正隆さんです。

 

「涼しげなデッキチェアー」「りんご酒」を組み合わせるのがスゴイ。リズムだけなら「シードル」「シャンパン」でもよかったハズですが、「ぶどう酒(ワイン)」でもなく「りんご酒」ですよ。これがセンスですよね。

 

この曲のキモは「嫌い あなたが大好きなの 嘘よ 本気よ」これぞ松本隆!ですね。

 

この楽曲はテンポが異様に遅く、歌詞も極限まで文字数が少ない特長を持ちます。その上で松本隆さん、ユーミン、さらにアレンジの松任谷正隆さんが「プロの仕事」を完璧にこなしていて、トドメとして松田聖子さんのメロウで不安定な心理を投影した唄声が重なるという、奇跡的な完成度の作品に仕上がっています。

 

マーメイドなのに裸足…丘に上がった人魚…刹那的で儚げな一夏だけの恋、を(一言も説明しないのに)聴く人に伝えてしまうのもスゴイ。

 

この舞台設定で決して「リゾートではしゃぐバカップル」にならないのは、創り手全員に「品がある」からでしょう。

 

1982年10月発売 11th.シングル「野ばらのエチュード」

 

 

作詞:松本隆さん、作曲:久々の財津和夫さん。編曲:大村雅朗さんです。

 

「風は秋色」と並ぶ「タイトルでわからない楽曲」ですね。トゥルリラートゥルリラー」といえば誰でもわかりますが。

 

この楽曲は聖子さんの文学性を際立たせてます。リアルに20歳の彼女が「ひとり静かに愛を見つめて 20才のエチュード」「よろこびも哀しみも20才なりに知ったけれど」と唄う。

 

哲学的なセンテンスと「知らない町を旅してみたい」というわかりやすさで、ヒット曲としてのバランスを取る松本隆さんのセンスももちろんスゴイですが、やはり聴く人に「もはやなんでもOK」な気持ちにさせるのは、聖子さんの唄声のチカラな気がします。

 

後編に続きます!

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