「渥美清」と「男はつらいよ」〜①寅さん以前の渥美清さん


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国民的人気映画「男はつらいよ」。主演の寅さんといえば渥美清さん。

 

1969(昭和44)年に始まり、ギネスブックにも1983(昭和53)年、シリーズ30作を越えた時点で「ひとりの俳優が演じた最も長い映画シリーズ)として世界記録に認定。

 

その後も「男はつらいよ」は1996(平成8)年に主演の渥美清さんが亡くなっても続き、50周年の2019(令和元)年にはシリーズ50作品目が公開。大ヒットとなっています。

 


 

●寅さん以前の渥美清さん

 

私も当然、後追い世代ですので映画「男はつらいよ」は正月と夏にあって当然、「渥美清さんといえば寅さん」のイメージです。

 

誰もが一度は「渥美清って、寅さんやる前ってどんな役者さんだったの?」「渥美清さんは寅さんだけを演じるのって、役者として幸せだったの?」と疑問に思ったことがあると思います。

 

この本は、そんな疑問を誠に丁寧に解き明かしてくれる必読の一冊。

この本を読むと「男はつらいよ」をまた新鮮な視点で観たくなる、そんな本です。

 

著者は芸論・評論でお笑いを語らせたら右に出る者はいない小林信彦さん

「自分が実際に見聞きしたことだけを書く」というポリシーと、ブレイク前からの親交を通じて、キモチの悪い手放しの礼賛でも暴露でもない、謎に包まれた「俳優 渥美清」と、「人間 田所康雄」の深層心理に深く想いを寄せた内容になっています。

 

参考文献「おかしな男 渥美清」
小林信彦著 新潮社(2003 平成15年) 

 


 

●近寄りがたい男

 

小林さんは渥美清という俳優を、「近寄りがたい男」と評しています。

 

曰く、「神経質」で「人嫌い」「情報通」で「見巧者」「天才ではなく才能のある努力家」そして「リアリスト」「親しくなるにつれて透明な膜を感じる」というのです。

 

渥美さんは「役者は“狂気“と“孤立“がなきゃダメだ」と語り、その生い立ちから時折、ゾッとするような“凄み“を感じたり、距離を置きたくなるようなコワサがあった、と。

 

人懐っこくて明るく朗らか、夢みがちな寅さんとは真逆のイメージで、ビックリします。

 

病気がちな幼少期、学校を退学して「テキ屋だった」といわれる謎の青年期肺結核での片肺を切除、2年間のサナトリウムでの闘病経験という「死との戦い」ストリップ小屋での喜劇人デビューさまざまな映画やTV番組でのハズしたりアタリだったり、嫉妬やバッシングの紆余曲折・・・。

 

この本では渥美清さんが「寅さん」というハマり役にたどり着き、ブレイクを果たす以前のエピソードが、およそ半分のページを割いて丁寧に描かれています。

 


 

●当時の喜劇人たち

 

渥美清さんの語る同時期のコメディアン論もすごい。フランキー堺さん、クレイジーキャッツ、三木のり平さん、藤田まことさん

 

そしてそれに加えて森繁久弥さん、藤山寛美さん、植木等さん、フランキー堺さん、伴淳三郎さん、萩本欽一さんなど同時代の「喜劇人」が多数登場。彼らが「渥美清をどう見ていたのか」が当人の言葉で語られます。

 

これが滅法、面白いのです(藤山寛美とのライバル関係、森繁久弥さんのベビーフェイスぶりと伴淳のヒールっぷりが絶品)。

もちろん、渥美清さんの「芸」についても深く考察されます。生い立ちや性格、日頃の言動を絡めて、「天才的な話術の面白さはどこから来たのか」がよくわかります。

 


 

●代表作を求めた渥美清さん

 

渥美清さんは寅さん以前、まったく売れない役者だったワケではなく、活躍し、「夢であいましょう」「若い季節」(NHK、1961-1966)TVショーのコメディアン、ドラマの主役としてお茶の間の人気者でもありました。

 

もちろん、主演映画も多数ありますがいずれも大ヒットとまではいかず、俳優 渥美清さんの目指す、満足できる姿ではありません。

 

「劇映画で役者として主役を張り、代表作が欲しい」

そして、ようやく辿り着いた鉱脈が「男はつらいよ」でした。

 

この本では「男はつらいよ」についても初期作品を中心に、当時のTV、映画界の状況と共に詳しく語られています。

 

次回は映画「男はつらいよ」誕生前夜、TVドラマ版についてご紹介します。

 

②へつづく


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