「キングコング」~1977 本作が”なかったこと”にされる理由

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いよいよハリウッド版で「ゴジラ vs キングコング(Godzilla vs. Kong)」が実現します。

今回は、数ある「キングコング映画」の中でもスルーされがちなジョン ギラーミン版「キングコング」(1976年/日本公開は1977 昭和52年)をご紹介します。

公開されたのは前回ご紹介した「スターウォーズ」の前年。当時7歳だった私は、本作を劇場で観て強烈なインパクトを受け、しばらくは毎日、キングコングのイラストを描いていたことを思い出します。

 

しかし、その後のコング リメイク ブームの中で本作が話題になることは少なく、それどころか後年の監督に否定されたり、それ以外にもなにかと悪評が高い作品なのです。

決して面白くないわけではないのに、何故?というと・・・なかなか面白いズンドコ伝説がありました。

 

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キングコングとは?

 

映画監督のメリアン・C・クーパーにより1933年に映画で誕生。以降、リメイク映画や漫画、アニメ、ゲームなどさまざまジャンルで人気を誇り、”世界で最も有名なキャラクターの一つ”とされています。

 

キャッチコピーは「世界8番目の不思議」。プロレスラーのアンドレ ザ ジャイアントがアメリカマットでこう呼ばれていたのは、キングコングがルーツなのですね。

 

ゴジラの生みの親、”特撮の神様”円谷英二さんがウィリス オブライエンの特撮技術とストップモーション アニメーションのオリジナル「キング・コング」(1933 昭和8年)を観て、こんな映画が創りたい!とゴジラ創作の原動力になったことは有名です(後に東宝が正規ライセンスを獲得して、「ゴジラ対キングコング」を公開しました)。

1976「キングコング」とは?

 

監督はジョン ギラーミン。

超高層ビル火災をテーマにしたスペクタクル映画の傑作「タワーリング・インフェルノ」(1976 昭和51年、第47回アカデミー作品賞ノミネート)、アガサ クリスティ原作の映画「ナイル殺人事件」(1978 昭和53年)などで知られる、大作映画が得意な大物監督です。イギリス空軍出身だけあって空撮やヘリコプター アクションはお手の物。本作のラストでもコングvsヘリが実現します。

そんな名監督の作品なのに、なぜに本作の評判が悪いのか?
それにはいくつかの理由が存在します。

 

叩かれる理由その① 舞台設定を現在に変え、ストーリーもアレンジしてしまった

まずはマジな批判から。

2005年版「キング・コング」のピータージャクソン監督(ロード オブ ザ リングの監督)は、この1976版が物語の舞台を現代に変えたことにダメ出しをしています。

 

オリジナル「キング・コング」はコングがNYに連れてこられる前、恐竜との格闘が見どころの一つですが、1976版ではそのシーンがありません。それに伴い、ストーリーもかなり異なるオリジナルです。オリジナルのコングファンはココが大きな不満でした。

 

ジャクソン監督はオリジナルの忠実なリメイクを目指し舞台設定も揃えた(1954年の設定)上で、巨額の製作費(248億8千万円!)の多くを自腹で負担するほどの気合の入れよう。1976版を「あんなのコングじゃない」と完全否定しています。

 

叩かれる理由その② ポスターやパンフレットが誇大広告だった

 

これは当時、6歳の私ですら気になった点です(笑)。

 

ポスターやパンフレットの宣伝用イラストでは、コングが(今はなき)世界貿易センタービルの2つのビルをまたいで、片手に美女、もう片手でジェット戦闘機を握り潰しています。

しかし、実際の映画ではジェット機ではなくヘリコプターですし、そもそもコングはここまでのデカさではありません。

 

当然、映画を観た人達は「あれ?あのシーンは?」となり、「ハコと中身が違うじゃないか!」「誇大広告だ!」と怒りました。さしずめいまならSNSで炎上確実です。

 

 

叩かれる理由その③ 巨大ロボットコングで撮影!は大ウソだった

 

本作の制作費は2500万ドル、75億円。そしてなんといっても目玉は、170万ドルかけて製作された等身大の巨大ロボットコングでした。

身長20メートル、胸囲12メートル、手の平の直径3メートル、足のサイズ2メートル、重さ5トンというド級のシロモノで、公開プロモーションのため来日もしています。

その日本プロモーション費用はなんと3.5億円!

 

当時、「映画のために巨額の費用をかけて実物大のロボットを作り、スクリーン狭しと大暴れ!」と映画雑誌の「スクリーン」や「ロードショー」などで大いに宣伝されました。

 

しかし…実際の撮影では、この巨大ロボコングはデカイだけでまったく役に立たず、演技どころかまともに動くことすらままならないポンコツぶり。結局、本編中このロボコングが登場したのはわずか30秒程度で、ほとんどのシーンは、着ぐるみを使って撮影されていたのだとか。

 

このロボコングを制作したのはカルロ ランバルディ。

イタリア出身の視覚効果アーティストで、のちに「エイリアン」(1979年)や「E.T.」(1982年)でアカデミー視覚効果賞を獲得したその筋の”巨匠”です。

 

ロボコングが使い物にならないと発覚するや、ランバルディは急遽着ぐるみを制作しますがその出来もイマイチで、実際の撮影のほぼすべては、当時若手だったメイクアップアーティストのリック ベイカーが自らスーツアクターを務めた”ベイカーコング”で行われていたのです。

しかし。

 

その存在はひた隠しにされ、ノンクレジットの扱い。
宣伝ではあくまでも「巨大ロボコングが大暴れ」と言い張ります。

 

このプロモーション戦略を強行したのはプロデューサーのディノ デ ラウレンティスなる人物でした。

 

ラウレンティスはイタリア出身。150本以上の映画のプロデュースを手掛け、インディペンデントのプロデューサーとしては業界最高峰の一人で「生きる神話の一人」の異名を取るお方。当時は日本でも監督のジョン ギラーミンよりも、ラウレンティスの名前が大きく取り上げられた程、影響力のある存在でした。

 

しかしこのお方、「戦争と平和」や「天地創造」などの超大作をいくつも手掛ける一方で5000万ドル(120億円)の巨費を投じた「デューン/砂の惑星」(1984年)が見事に大コケして大赤字になるなど、何かと山師的な人物。

 

彼こそが宣伝文句としてインパクトのある「巨大ロボコング」をPRしまくり、誇大広告的なイメージイラストを描かせた張本人に間違いないでしょう。

 

この件は後に苦労を重ねてコング役を熱演したのに”消された”リック ベイカーにより暴露され、ランバルディのアカデミー視覚効果賞受賞を巡って審査員の一人が抗議のため協会委員を辞任する騒ぎにまで発展しています。

 

*ちなみにこのリック ベイカーさん、「狼男アメリカン」(1981年)で新設されたアカデミー賞メイクアップ賞を受賞。あのマイケル ジャクソンの「スリラー」PVを手掛けたほか、「グレムリン2 新・種・誕・生」(1990)ティム バートン監督「PLANET OF THE APES 猿の惑星」(2001)、「メン・イン・ブラック」シリーズ、「ホーンテッドマンション」(2004)、「マレフィセント」(2014年)などで7つのアカデミー賞に輝き、特殊メイクの第一人者となりました。

 

主演女優ジェシカ ラングの苦労

 

本作の主演女優、コングを虜にする美女は本作がデビューとなるジェシカ ラングです。必要以上にエロいシーンの連発で、日本でも人気者になりました。

しかし、海外では映画自体が酷評された上、ジェシカ自身に「キングコングの恋人」というイメージがついてしまったことでその後3年間、映画出演の機会に恵まれないという憂き目に遭いました。

 

その後、1981年の「郵便配達は二度ベルを鳴らす」で注目され、1982年に「トッツィー」でアカデミー助演女優賞、1994年には「ブルースカイ」でアカデミー主演女優賞を受賞するなど、演技派女優として確固たる地位を築きました。

 

1977年日本公開映画第1位に

 

とは言うものの、本作は製作費2,400万ドルの3倍以上となる9,000万ドルの興行収入を記録。米バラエティ誌のランキングでも5位に。

 

日本でも配収30億9000万円の大ヒット、1977年公開映画では堂々第1位です。

2位「八甲田山」、3位「人間の証明」、4位「遠すぎた橋」、5位「八つ墓村」を抑えてですから、大したものですね。

 

いろいろと叩かれる理由のある作品ではありますが、やはり私にとっては思い出の作品。

実際、コングが島で初めて姿を現すシーンや、NYで大暴れするシーン、そして切ないラストなど、鮮明に覚えています。

 

人により評価はそれぞれですが、オリジナルの「キング・コング」に思い入れのない日本人にとっては、それなりに楽しめる作品だったと思います。

続編「キングコング2」1986

ちなみに…10年後、ラウレンティス & ギラーミン コンビは、続編となる「キング・コング2」を制作しています。

前作でヘリからの銃弾を浴び、超高層ビルから墜落して完全に死んだハズのコングが「実は10年間、昏睡状態で生きていた」という、宇宙戦艦ヤマトもビックリの展開に口アングリ。

 

さらにはレディコングが出てきて子供まで生まれてしまう、誰も期待していないストーリー展開で全世界が驚愕。

 

全米470万ドル、日本での配収9億円という寂しい結果に終わりました。

 

おまけ 映画「キングコング」進化の歴史

コメント

  1. さねもく より:

    プロレス〜ザ.コブラで検索していてこちらのブログを見つけました。いつも楽しく拝見してます。
    キングコング1976は子供のころ見て、
    ストーリーも入りやすく、主演のジェシカラングも美しく、私としては楽しんだ映画でした。ロボットと特撮を組み合わせた力作と今まで思っていましたが、ロボットのシーンがたったの30秒とは衝撃でした。それでも、最新のキングコングは長すぎて私は中弛みになってしまったので、私としてはキングコングといえばこの作品です。
    プロレスの前のアップにもコメントさせて頂いてもよろしいでしょうか。

    • MIYA TERU より:

      コメントありがとうございます!ぜひ昔の記事にもコメント宜しくお願いします!
      「キングコング」、同世代でしたらやっぱり強烈に印象的ですよね。
      あの巨大ロボ、どう見てもあんな表情豊かに動けるとは思えず、当時も違和感ありましたが(笑)、私も今回調べて初めて知ってビックリでした。

  2. 福井直昭 より:

    いつも同時代同趣味(というか多趣味笑)の方から溢れ出すバランスの良い文、共感し楽しんで読ませていただいております。キングコングに関しては知らないことばかりで、勉強になりました。ちなみに、同年1970年生まれの私は、母と一緒に、キングコングガムの応募券をひたすら集めて、キングコングのぬいぐるみをもらったのを覚えています。

    • MIYA TERU より:

      福井さんコメントありがとうございます!キングコングガム、ありましたね!忘れてましたw
      景品はぬいぐるみだったのか・・・そしてもらったんですね。スゴイですw

    • 田宮繁人 より:

      キングコング、懐かしい!母親に連れて行ってもらいましたよ、意外に悪評なんですね、私は今でも好きですが。
      ただ、御指摘通りパンフやポスターのあのイラストは…これはイメージ画だから本編とは違うんだと無理矢理大人の解釈したものです(笑)
      キングコングガムで30点集めて私もフィギュア手に入れました!
      残しておいたらお宝だったのになあ

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