「COMPLEX」③~20110730_31”日本一心” 吉川晃司×布袋寅泰 21年越しの”復讐”


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吉川晃司×布袋寅泰「COMPLEX」編 最終回は、2011年7月30/31日に東京ドームで“われた「東日本大震災復興支援ライブ~日本一心」をご紹介します!

 

 


 

2011年3月11日。

後に「東日本大震災」と名付けられた、弩級の天変地異が日本を襲いました。

 

最初に動いたのは吉川晃司さん。

 

事務所スタッフの実家家族の安否を確認するべく現地入りした吉川さんは、一切公表する事なくボランティアとして活動を続けます。

マスクで顔を隠し、瓦礫の撤去から自転車修理までやったそうです。

 

この時の心境は「エンターテインメントが何かできる状況じゃない」

 

しかし、家ごと津波に流され、着の身着のままで被災を余儀なくされている人達との交流の中で、復興には時間と金がかかることを痛感。「自分にできること」を模索します。

 

そしてたどり着いた結論が「COMPLEX再結成」でした。

 

吉川さん曰く「人情より上のものって何があるの。プライドとか意地とか言ってる場合じゃない」

 

ソロよりCOMPLEXの方が多くの人が集められて、より多くの義援金が集められる。シンプルですが勇気ある決断でした。

 


 

一方の布袋寅泰さんは、揺れていました。

 

かつての盟友、氷室京介さんが同様に復興支援チャリティを検討しており「もしかするとBOΦWY再結成でお呼びがかかるのではないか」という淡い期待がありました。

 

そのため、布袋さんは吉川さんの申し出を一度は断った、とされています。

 

しかし、ー氷室京介さんはソロでのBOΦWYライブを決断します。これまた曲がったことの嫌いな漢気溢れるヒムロックは、大義名分があろうとも解散時の“遺恨”を水に流すことはしなかったのです。

 

布袋さんに断られた吉川さんは、ソロでのチャリティライブ開催に向けて動き始めます。そこへ、布袋さんから「一緒にやろう」

 

普通なら「もういいよ」となりそうなところですが、吉川さんはこの申し出を快諾。理由はあくまでシンプルに「その方が人が集まる」

 

2人は再結成を、近所の公園で会話して決断したとか。あの大男2人が公園で、と想像すると笑えます。

 

そして他のアーティストがキャンセルした東京ドームを押さえる事に成功、ライブは7月30日と決定。ほどなくして31日の追加公演も決定し、2DAYSとなりました。


 

私は「COMPLEX再結成」を知り、単純に嬉しかったですね。

もう見られない、と思っていた顔合わせで、大義名分もこれ以上ありません。

 

そして…私は内心、活動休止以降の吉川さんのミュージシャンとしての「進化」を、より多くの人が目の当たりにする絶好の機会、とも捉えていました。

 

当時は東京も輪番停電など原発事故の影響が続き、開催自体が危うい状況でしたが、少しずつ落ち着きを取り戻しつつあり、その日は刻々と近づいて来ました。

 

ライブタイトルは「日本一心」。吉川晃司さんが書家の紫苑さんに申し入れて使用を許可された言葉です。

 

演奏曲目は?曲順は?バックメンバーは?

そしてなにより、2人は「一心」なのか。

 

当時の「活動急死」の顛末を知る多くのファンは、それが気になって仕方ありませんでした。

 

この数年前から互いのライブに花を贈り合ったり、近所のスーパーでバッタリ会って立ち話をした、など互いの口からエピソードが語られるようにはなっていましたが、それでも、もはや2人が顔を合わせて話をする事すら想像できないほどの距離がありました。今回の再結成発表後も、2人揃ってメディアに露出することは、一切ありませんでした。

 

私は初日、7月30日のチケットを押さえました。

 


 

 

開催当日。文字通り超満員の東京ドームは、異様な期待感と緊張感がありました。

午後5時。ドームが暗転し、「ワルキューレの騎行」が大音量で流れ、スクリーンに若かりし日の2人の映像が映ります。

1stツアーのオープニング曲で、映像もその時のもの。

 

あれから21年…会場の誰もが、センチメンタルな気分と、興奮を抑えきれない空気に包まれます。

 

そして…「BE MY BABY、BE MY BABY」のSEと共に、割れんばかりの大歓声の中、ステージの両端から2人が姿を表します。

笑顔でステップを踏む布袋さんに対し、吉川さんはニヤリとだけ笑うとカタい表情のまま、ステージへ。

 

そしてステージ中央で対峙する2人。

まだ間合いがあるまま、いまにも回し蹴りとパンチが交錯しそうです(笑)

その刹那、布袋さんが右手を差し出し、吉川さんが握り返す。

この瞬間、21年の恩讐と時空を超えて2人が「一心」であることが観客に示されました。

もうドームは揺れています。「コレを観に来た!」もうチケット代のモトが取れました(これからだろ)。

 

リズム隊に布袋さんのギターが乗り、そこに吉川さんのボーカルが乗る。そのたびにイチイチ歓声が上がります。

 

これがホンモノ。

互いのソロでセルフカバーしたのとは違う、あの頃のまま、そしてあの頃から格段にパワーアップしたCOMPLEXが、再び「融合」しました。

 


 

後に吉川さんが語ったところによると、このオープニング演出はスタッフ間でも「格闘技イベントみたい」と言われたそうです。

 

すかさず吉川さん「ジャイアント馬場とアントニオ猪木?だったらオレが猪木だよね」…布袋さんはイヤな顔をして、シカトしたそうです(笑)

 

「BE MY BABY」のラストは、吉川さんのシンバルキック!あの頃にはやっていなかったアクションを、布袋さんに促され、目の前でやる。

そう、2人はノスタルジーではなく、今も進化し続けている象徴です。

 

「こんばんは、COMPLEXです。今日は東日本大震災被災地復興支援に賛同し、集まっていただき、どうもありがとうございます。日本一心と掲げた旗のもと、今、俺たちは同じ志を持つ“同士“になりました。同士諸君…共に今夜は大いに歌って踊ろうぜ!」

 

続く2曲目は「PRETTY DALL」、3曲目は「CRASH COMPLEXION」。

 

もう間違いありません。

 

私はこの時点で「このセットリストは、19911103、最後のステージの再現だ」と確信しました。

ここにも私は吉川さんの「あの日のリベンジ」という意図を読み取りました。

 

そしてこの頃には、観客の誰もが吉川さんの唄声にシビレていました。「昔より声出てね?」「唄、上手くなってない?」

年齢と共に衰えをみせる同世代のアーティストが多い中、久々に観た人は吉川晃司さんのフィジカルとボーカリストとしての仕上がり方、迫力に驚いたと思います。

 

そしてそれは、布袋さんもまたしかり。

ハッキリ言って私はソロの布袋さんより、ボーカリストの横でコーラスしながらギターを弾く、コンポーザーとしての布袋さんの方が好きなのです。

布袋さんもまた、あの時よりも懐が深くなり、深化していました。

軽快なステップにターンのアクションはそのままに、昔より更に変幻自在自に音色を奏でる姿はやっぱりカッコいい。唯一無二の存在感です。

 


 

吉川さんは、ギタリストとしても進化しています。ソロを観ている人なら知ってますが、COMPLEXの楽曲をやる時は布袋さんのフレーズを完コピ。ステージでも半分の時間はギターを弾き、備え付けガットギターや時にはベースとのダブルネックまで用いて後藤次利さんバリのスラップ操法までやるのです。

 

COMPLEXでは「路地裏のVENUS」「DRAGON CRIME」、そしてなんといってもこの日唯一、原曲テンポを度外視した超スピードでの「GOOD SAVAGE」で見事なツインギターを披露しました。

 

そんな吉川さんの進化に、布袋さんは観客の期待に応えるアクションを繰り出します。

 

「IMAGINE HEROES」で吉川さんの背中に寄り添いギターを奏で(吉川さんが「え?」という顔してたのが微笑ましい)、「GOOD SAVAGE」で吉川さんのマイクで2人で唄う…

こんな「バンドみたいな」アクションは、「あの頃」は決してやりませんでした。

 

あの頃の2人はいつも対角線で、「同じ敵を倒す同盟」みたいな関係であり、共に手を取って仲良くやってます、みたいなアクションは決してステージでは見せなかったのです。

 

それを敢えてここでやる、というのが、布袋さんなりの「一心」の見せ方だったのでしょう。この辺りのセンスは、流石としか言いようがありません。

 

このライブには“オレが唄い、オレが弾く“というキャッチコピーが付いていましたが、古くからのファンの間では“オレも弾く、オレも唄う“となって、また揉めるんじゃねぇの(笑)、と言われていました。

 

実際はそんな心配は無用で、互いに大いに唄って弾いて、でも互いを尊重しつつ、存分に良さを引き出しあってくれました。

 


 

この日のミュージシャンは、

 

小池ヒロミチさん(ベース)
矢代恒彦さん(キーボード)
スティーヴ エトウさん(パーカッション)

 

というあの日のメンバーに、新たに

 

坂東慧さん(ドラム)

が加わりました。

 

「バンちゃん」こと坂東さんは吉川さんソロライブの常連で、本籍はバカテクフュージョンバンド「T-SQUARE」。1983年生まれの若き天才は、COMPLEXラストライブの時は8歳!

 

しかしながらその確かなテクニックとグルーヴは、この大役を見事に果たしました。

 


 

「GOOD SAVAGE」からの怒涛の後半、「恋をとめないで」「MAJESTIC BABY」でドームは最高潮に達します。

5万人の大観衆が、心の底から楽しみ、唄う光景は壮観でした。

 

本気で切望とか、熱望されるアーティストの多幸感。

吉川さんは最後まで観客にマイクを向けて「休む」ことなく、フルコーラスを唄い上げます。この辺りにもこの夜、復興支援に賭ける「覚悟」を見ました。

 

そしてアンコール。「1990」が始まります。

否が応でも想いが届かず活動休止に至った、吉川さんのあの日の切なさが、超満員の観客の胸をよぎります。

 

解けた靴紐を結んで 振り向かずに歩いて「行こう」

 

ラストの一節はこの日唯一、あの頃と歌詞を変えて唄われました。2日目の吉川さんは、堪えきれず涙を流していた、といいます。

 

その後はもう一つの大盛り上がり楽曲、「RAMBLING MAN」。

 

たかがお前のことなんて

世の中誰も知りやしない

You’re just a RAMBLING MAN

思い知らせてやれよ

 

この歌詞を聴けば、吉川晃司さんという人が、昔もいまもまったく変わってないことがよくわかります。

 

そして、本当のラスト「AFTER THE RAIN」。

 

天安門事件をモチーフに当時、中国の若者に向けて贈られたこの楽曲が、

奇跡的に、これから復興に立ち向かわざるを得ない東北の人々への想いとシンクロします。

 

君の勇気が
群がる人波の中
埋もれてゆく
かき消されてゆく

手を差し延べる
仲間も力尽き果て
行き場のない
悲しみがつのる

街中を その頬を 流れる涙を
無駄にしないで あきらめないで

 

吉川さんは打ち上げの場で「いろんな被災地の光景が浮かんで…真っ白になって“唄わされた“のは、初めての経験かもしれない」と語っていました。

 


 

こうして21年ぶりの再融合は、終焉しました。

 

計10万人を動員し、寄付総額はBlu-ray、CD売り上げを含み6億8千万円。

打ち上げの場で吉川さんは「きちんと収支が公開できて、1円でも多く寄付できるよう、頑張ります」と語っていました。

その言葉通り、全額が寄付されたことがこちらで報告されています。

 

 


 

今回の再結成で印象に残った吉川さんのセリフが「曲作る人と詞を書いて唄う人の違い

 

「20年も昔の自分が書いた詞(だけ)を唄うという作業は、思ったよりシンドかった」「(復興支援という)目的がなかったら、途中でやめてたかも」でした。

 

そして、きっと吉川さん本人は「復興支援が目的で、リベンジとかそんな小さなことは考えてないと否定されるでしょう。

 

しかし、長年 観続けてきた人間からすると、このライブは21年の大河ドラマ、人間模様のリベンジの舞台にしか見えませんでした。

 

そして吉川さんは、これ以上ないステージで、見事に「復讐」を遂げました。

 

佇まいとパフォーマンスだけで布袋さんのミュージシャンとしてのスキル、テクニックと戦った20年前。それをよしとせず、あくまでもミュージシャンとして対等に「戦いたい」と愚直に足掻いた20年。

 

かつて「消費社会の申し子」的キャラで一世を風靡したアイドル時代しか知らない人、COMPLEXでファンになり活動休止と共に離れていった人、90年代のソロ復帰以降しかしらない人、2000年代の役者としての活動でファンになった人…

 

そんなさまざまな層に向けて、抗い続け、妥協せずに頑なに貫いてきたことが決して無駄ではなく、「よく知らなかったけど、吉川晃司ってスゲーな」と届いた。

 

「カッコつけてる人」から「ホントにカッコいい人」になった。

 

吉川晃司さんにとってのCOMPLEX後の集大成であり、21年越しのリベンジ完遂を、あの日と同じ東京ドームで果たした。

それが私から観た「日本一心」でした。

 


 

COMPLEX「日本一心」
2011.7.30/31 東京ドーム
セットリスト

 

01. BE MY BABY
02. PRETTY DOLL
03. CRASH COMPLEXION
04. NO MORE LIES
05. 路地裏のVENUS
06. LOVE CHARADE
07. 2人のAnother Twilight
08. MODERN VISION
09. そんな君はほしくない
10. BLUE
11. Can’t Stop The Silence
12. CRY FOR LOVE
13. DRAGON CRIME

ROMANTICA

14. PROPAGANDA
15. IMAGINE HEROES
16. GOOD SAVAGE
17. 恋をとめないで
18. MAJESTIC BABY

<アンコール>
19. 1990
20. RAMBLING MAN

<ダブルアンコール>
21. AFTER THE RAIN


 

<関連リンク>

①COMPLEX 1989

②COMPLEX 1990

「80年代の吉川晃司」④ 1987_88

「80年代の吉川晃司」③ 1986

「80年代の吉川晃司」② 1985

「80年代の吉川晃司」① 1984


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