12インチ シングル レコード〜80年代のリミックス ブーム

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80年代、「12インチシングル」というものが流行りました。

 

どんなラインナップがあったのか知らべてみたのですが、洋楽に比べると邦楽についてはなかなか情報がまとまっておらず、取り上げた事を後悔しました…(笑)

 

なんとか情報と記憶をかき集めて、まとめてみます。

 

 

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「12インチシングル」とは?

 

CD〜世代の方はそもそも、レコードすら見たこともないでしょう。ざっくり説明すると、まず、レコードは

・大型サイズ(直径30センチ)のLPレコード

・小型サイズ(直径17センチ)のシングル盤(EPレコード)

に大別されます。

 

LPレコードは、A/B面に各4〜6曲、計10曲程度収録した「アルバム」向け。

シングル盤は、その名の通りA/B面に各1曲ずつ収録した「シングル」向けです。

 

余談ですが、アルバムは33回転、シングルは45回転、と回転数が違い、いちいちレコードプレーヤーのスイッチを切り替えて聴く必要がありました。

 

そして、今回ご紹介する「12インチシングル」は、

LPレコードのサイズ(直系が12インチ=約30センチ)に、片面1曲を収録し、45回転で再生する規格です。

 

ややこしい。

 

要は「アルバムサイズの、でっかいシングル盤」ということです。

 

当然、「1曲の収録分数が長くできる」ということと、アナログレコードの仕組み的に「音質が良くなる」というメリットもありました。

 

 

ルーツはジャマイカ?

 

Wikiを検索すると、どうやらこの規格はレゲエ ミュージックのジャマイカがルーツのようです。その後、アメリカで1970年代初旬から存在していた模様です。

 

 

80年代、海外の12インチブーム

 

80年代、洋楽で「ロング バージョン」「エクステンデッド バージョン」などと称した、アレンジシングルが続々と発売され、12インチ シングル ブームが起こります。

 

ディスコやパーティーなどでDJが行う「リミックス(remix)」を施したもの、という意味合いです。「リミックス」というワードも、この頃にメジャーになりました。

 

いくつか、洋楽の代表的なものを挙げると…

・Thompson Twins「Hold Me Now」「Doctor! Doctor!」
・a-ha「Take On Me」
・David Lee Roth「California Girls」
・Howard Jones「New Song」
・Sheila E.「The Glamorous Life」
・Yes「Owner Of A Lonely Heart」
・Madonna「Like a Virgin」「Material Girl」
・Frankie Goes To Hollywood 「Relax」
・Duran Duran「The Reflex」
・The Power Station「Some Like It Hot」

などなど…まだまだありますが。どれもこれも懐かしいですね…。

 

中でも、私が特に印象深い12インチは、コレです!

 

日本における「12インチ」

 

調べてビックリ。

 

なんと、日本で初めてこの規格を採用したのは「親父の一番長い日」さだまさしさん でした!(1979年10月12日発売)

もちろん「ダンスバージョン」…なワケはなく、12分30秒もある長い楽曲を収録するための策。

 

当時、日本では前例のない形態だったため、ラジオ番組や有線放送等で流す際に回転数を間違える(LPと間違えて33回転で再生される)放送事故がしばしば発生したそうです。そりゃそうだ。

 

洋楽扱いですがピンクレディーの全米デビュー曲「PINK LADY / KISSIN THE DARK」(1979年)も、12インチ シングルでした。

 

80年代の邦楽12インチブーム

 

12インチはこのように、「単に長い尺のシングル」という用途もありますが、醍醐味は「スペシャルアレンジ」「リミックス バージョン」「ダンス バージョン」です。

 

その意味での先駆者は、やはり佐野元春さん。

 

1984年6月、アルバム「VISITORS」のリリースに合わせて「トゥナイト」「コンプリケーション シェイクダウン/ワイルド オン ザ ストリート(Special Extended Club Mix)」などを、12インチ(MAXI) シングルとして次々とリリースします。

 

これに触発された吉川晃司さんが1984年12月に「MAIN DISH -PARTY VERSION-」12インチ シングルを限定リリース。

セカンドアルバム収録曲の「No,No,Circulation」(大沢誉志幸氏作曲)の超ロングバージョンをメインに、B面にデビューシングル「モニカ」、セカンドシングル「サヨナラは八月のララバイ」2曲のリミックス バージョンを収録して、大ヒットしました。

 

「No,No.Circulation」は「4人目のYMO」松武秀樹さんによるオーケストラヒット&サンプリング シーケンサーが印象的な強烈なパワーチューンで、「モニカ」はDuran2の「The Reflex」を意識したサンプリング リミックス。

 

このヒットが業界の話題となり、邦楽ロック、アイドル界に12インチ シングル ブームが起こります。

 

 

アイドル・歌謡界の12インチシングル

 

・少女隊「Forever」

 

・小泉今日子「ヤマトナデシコ七変化」「ハートブレイカー」(KYON2 名義)

 

・C-C-B「Lucky Chanceをもう一度」「元気なブロークンハート」

 

・中森明菜「赤い鳥逃げた」(レコ大受賞曲「ミ・アモーレ」の別歌詞、ラテン リミックス バージョン)

 

・チェッカーズ「heart of rainbow/ブルーパシフィック」

 

・中山美穂「WAKU WAKUさせて」

 

・松田聖子「Dancing Shoes」(全米デビュー曲)

 

・斉藤由貴「土曜日のタマネギ/AXIA〜かなしいことり」

 

・薬師丸ひろ子「天に星、地に花」

 

・アン ルイス「六本木心中」「あゝ無情」

 


・小林麻美「雨音はショパンの調べ」

 


・池田聡「モノクローム ヴィーナス」

 

・吉川晃司「Can’t you hear the Rain-Dance」「Nervous Venus」

 

などなど・・・

 

ロック界の12インチ

 

・爆風スランプ「無理だ」

 

・BOØWY「BAD FEELING/NO NEWYORK」

 

・山下久美子「FLIP FLOP & FLY」

 

・REBECCA「MOTOR DRIVE」

 


・大沢誉志幸「彼女はFUTURE-RHYTHM/そして僕は途方に暮れる」

 

・尾崎豊「卒業/SCRAMBLING ROCK’N’ROLL」

 

 

・TMネットワーク「DRAGON THE FESTIVAL」「YOUR SONG」

 


・the東南西北 「ため息のマイナーコード」

 


・久保田利伸「TIMEシャワーに射たれて」

 


・NOBODY「モノクロームの夏」

 

などなど・・・。

 

 

12インチ シングル ブームの終焉

 

この「12インチシングル」は、前述の通り「単なるデカイサイズのシングル」のものから、趣向を凝らしたリミックス、ロングバージョン化されたもの、に分かれます。

 

そして、リミックス、アレンジも出来、不出来が顕著で、オリジナルを超える「12インチならでは!」なクオリティのものはごく僅かでした。

 

単にイントロや間奏が長いだけのつまらないアレンジや、ライブテイクを収録したもの、さらにはこれなら原曲の方がいいや、という台無しアレンジものまで、まさに玉石混交でした。

 

やがて85年頃にはCDが主流となり、当然この「12インチ シングル」という規格自体が不要になりました。

 

が…それ以前に「なんのために12インチにしたの?」という低クオリティのリリースが多かった事も、洋楽に比べ邦楽の「12インチ シングル」が評価されていない理由な気がしてなりません。

 

洋楽の12インチはコレクションCDが多数、発売されていて、いまもAmazonなどで検索するとたくさん出てきます。

 

しかし、邦楽の12インチシングルは、CD化しているものはごくわずかで、「12インチシングルバージョン」として明記されていなかったり、と非常にわかりにくくなってしまっています。

 

そんなこんなで、もはや記憶の片隅においやられてしまった12インチシングル。

 

1980年代、元気だった歌謡曲、邦楽ロック界のエポックメーキングな出来事、として、もう少し再評価されても良い気がしてなりません。

 

コメント

  1. 大石良雄(本名) より:

    拝啓 サイトヘッド様にはよろしくお願いいたします。  この「リミックス」について、本題からは外れそうですが、誰も書かず言わない事を書かせて頂く事に感謝いたします。
    *「リミックスの原点とは? 実はクラシック音楽のスコア解釈に既に存在していた?」
     こう思われてならぬのは、実は古典派後期からロマン派にかけてのヨーロッパでの音楽演奏状況は、どうも「作曲家オリジナルのスコア通りの演奏とは程遠かった」様子なのです。各種文献から「楽器編成が足りなくても、また平気で楽器を増やしたり減らしたり、大幅な改変等は日常茶飯事だった」と。ベルディなどは、自身のオペラが当時の歌手たちにより「ヴィルトオージティをひけらかす改変=異常なテンポルパート、フェルマータ、細かい改変」等に耐え切れず「簡単な事ですよスコア通りにやってくれ」と、、、どうもストラヴィンスキーも同じ事を訴えていた様です。当時の歴史的指揮者たちもどうやら同様で「HVヴューロウ等は、文献から相当な改変を行っていたらしい事実」があります。これらに敢然と挑戦してしたのがトスカニーニ?と言われますが実は、このトスカニーニさえも大幅なスコア改変を行っていました。唯一部にはドビュッシー等には直接許可を求め許諾を得た事実も在ります。このクラシック音楽での「リミックスの第一人者は紛れもなくストコフスキー」であり、氏はこれを「トランスクリプション=移し替える」と表現しましたが、現在氏の演奏を聴けば「同じ曲とは思えぬ程に曲の雰囲気印象が違う」のです。実はこの思考が良い面に働いたのが「バッハオルガン曲周辺のオケ編曲や展覧会の絵の氏バージョン」ですが、残念だが不成功の例の多いのです。
    *「実は、1960年代後期小学校の頃からリミックスの真似事をしていた自分の心境」
     この当時小6と思いますがソニーの旧式オープンリール録音機を借りてきて散々いたずらしているうちに、アナログテープの切り貼りを覚え疑似リミックス?適当な事をしていました。
    *「リミックスとは? 正直どうしても他人様のフンドシの上で相撲取っている感覚しか無い」
     つまり、リミックスとは誰が何を偉そうな事を言おうと「大元オリジナルが無くては存在せず、創造=クリエイティヴの原点では無い」と断言できます。今までの経験から「リミックス」には「ブートレグ=完全非公式 リワーク=大幅な原曲の改変 エディット=原曲の各種バージョン違い VIPミックス=自分自身での再ミックス」等が存在する様ですが、その境界線は極めて曖昧であり「物凄くグレーゾーン」な訳です。昔のディスコDJのいじる程度のリミックスは大した事も無かったが、問題は「ホルガーシューカイの様な、シュトックハウゼンに学び基礎理論を習得した様な輩が行う、徹底した原曲ぶっ壊し細分化サンプリングによる全く違う曲への再構築」等は、物凄く考えさせられます。何せこの人は自分よりも古くからアナログテープで現代と同じ事をしていたのですから。こうした輩は論外として現代の様な非常にハードテクニックの進歩した時代は何でも出来てしまう、、、1980-90年代は非常に高価高額な「フェアライトCMI シンクラヴィア オーディオフレーム」等の数千万単位の疑似DAWの世界であり、もしも「マルチトラックマスターテープが手元にあれば、それを上記疑似DAWにコピーして全く別の曲にする」なんてぇ事も一時流行りましたから。今日はもうそんなバカ高価な疑似DAWも必要無く、そこらの安物PC&ソフトで大抵の事は出来る、、、大変恐ろしい時代です。何かと色々聴きますと、確かに素晴らしいリミックスも存在するが、しかしどうしようも無いガラクタも多い。この相違はやはり「最初のアイディアと持っている技術力の差」と言えます。今日ハードやソフトの優劣の差はほとんど無く言い訳には出来ず、やはり創る=とは書きたくないのであえて「作る」と書きますが「作る側の頭の中身の勝負」ですね。
    つまり現在、あまりに簡単にリミックスもどきが誰にでも出来る為に、だからこそ優劣の差が物凄く目立つのです。自分は以前から「他人様のフンドシで相撲取る事は疑問疑念があり、極めて懐疑的」でしてそれは変わりません。これを完全に否定し葬ってしまえば今日音楽や芸術全般は成り立たない事も事実であり、非常に難しいのですが、こういった行為アクションは、ある意味「パロディ」ともリンク共通する部分も多く、どうしても一度徹底的な議論や新解釈による法整備が必要と思います。まだこの分野では自分の思考も固まらずあやふやですが、ぜひサイトヘッド様、ご訪問の皆様には議論にご参加いただき何かしらの一助になれれば、本当に幸いと思います。この度は何かと有難うございました。   敬具

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