昭和特撮「レインボーマン」「ダイヤモンド・アイ」「コンドールマン」〜川内康範 異色特撮3部作 1972〜75

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昭和特撮シリーズ、今回は川内康範氏が生み出した昭和の怪3部作、「レインボーマン」「ダイヤモンドアイ」「コンドールマン」をご紹介します。

docomoのCMに何の説明もなく登場した「ゼニクレイジー」。コンドールマンの悪役、とわかる人はどれだけいるのでしょうか。。。

 


 

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●川内康範 (かわうちこうはん)氏

 

もはや晩年、森進一さんとの「おふくろさん」騒動でしか知らないという人の方が多いでしょうが、小林旭「銀座旋風児」シリーズなど原作および脚本や、歌謡界では青江三奈さんの師匠などとしても知られる一方、我々世代では「まんが日本むかし話」の監修および主題歌の作詞なども手がけたお方です。

そして氏は日本の特撮ヒーローの始祖とも言える「月光仮面」の生みの親でもあります。

 

まだモノクロのTV黎明期に「月光仮面」「七色仮面」「アラーの使者」を生み出した氏はその後、特撮ヒーロー全盛の70年代に「レインボーマン」「ダイヤモンド・アイ」「コンドールマン」という、異色過ぎる特撮ヒーロー3部作を送り出します。

 

この3部作が異色過ぎる理由としては、高度成長期の日本の社会問題、戦争を忘れ増長する日本人のエゴに対するアンチテーゼが描かれまくっている点です。その作風は一言で言えば「サイケデリック」。いずれも、なんともおどろおどろしいけどクセになる、不思議な魅力でマニア人気の高い作品です。

 

ちなみに、放送はすべてNET(現 テレビ朝日)ですが、「レインボーマン」と「ダイヤモンドアイ」は東宝制作、コンドールマンは東映制作。「八手三郎」のペンネームで知られる東映の名プロデューサー、平山亨さん曰く「川内先生がNET社長室に乗り込み、”これをやりたまえ”と直立不動のNET社長に企画書を手渡しして決まった」とのこと。川内先生偉すぎます。

 

©川内康範/愛企画センター/NET/東宝/東映


 

●愛の戦士 レインボーマン

1972年(昭和47年)10月6日〜1973年(昭和48年)9月28日
NET(現・テレビ朝日)系
毎週金曜日19:30 – 20:00
全52話放送

「インドの山奥で〜」さまざまなバージョンの替え歌が全国で大流行した主題歌、そして「日本人を皆殺し」という歌詞がキョーレツ過ぎるエンディング「死ね死ね団のテーマ」は、聞いたことがある人も多いと思います。

 

私は法事のたびに「アノクタラサンミャクサンボダイ」というお経を聞くとレインボーマンを思い出します。

 

悪の組織「死ね死ね団」は大東亜戦争中に日本軍により虐殺、虐待を受けた外国人による反日組織。日本の繁栄を憎み、日本人を堕落させ破滅させるのが目的という過激なコンセプトです。

 

首領のミスターK(平田昭彦氏)は見た目は日本人ですが中身は完全な白人。シルバーの髪にサングラス、葉巻を加えて下す作戦は日本人同士、味方であるレインボーマンに対して不信感を抱かせたり、新興宗教を流行らせたり、偽札をばら撒いたり、インフレを起こして食料危機を招いて暴動を誘発したり。←悪い!

 

最終回では日本を照準としたミサイルの存在をTVで公表し「レインボーマンを処刑するなら許してやる」と日本国民に対して取引を持ちかけるという徹底ぶり。どこかの国の首領さまのようです。

 

レインボーマンはダイバダッタのもとで修行をした神の化身であり、日蓮宗の寺に生まれた氏の思想から仏教をバックボーンにしたヒーローです。当時、ヨガや瞑想というものをこの番組で知った子どもが多かったと思います。

 

日月火水木金土と七変幻するのがウリでしたが、毎週毎週、ほとんどターバングルグル巻きの「太陽の化身」しか登場せず、月や火、水の化身が好きだった私は「またコレかよ!」と不満でした。

 


 

●光の戦士 ダイヤモンド・アイ

1973年(昭和48年)10月5日〜1974年(昭和49年)3月29日
NET(現・テレビ朝日)系
毎週金曜日19:30 – 20:00
全26話放送

 

真っ青なツルッパゲに目がダイヤモンドという異様なルックスに目が釘付け、さらにはマントにステッチともはや変質者並みの素っ頓狂な出で立ちですが、中東の最大のダイヤモンドに込められた正義の心がダイヤモンド・アイとなって戦う、というストーリーで主人公とヒーローが別人、という珍しい設定でした。

 

ジャーナリストの主人公が政治家や商社マンなどの悪事を暴き、ラストはそれらの人間達が前世の欲望の化身モンスターとなり、ダイヤモンド・アイに成敗される、というもので、全編に渡り人間のエゴの醜さを描いています。

 

こちらも仏教の影響が色濃く、ダイヤモンド・アイが人間に化けた前世魔神を察知する際に「外道照身霊波光線」、汚れた人間の魂を救う時には「怨霊逃散洗礼光線」を用います。禍々しさにも程がありますね。中東のダイヤという設定はどこへ…

 


 

●正義のシンボル コンドールマン

 

1975年(昭和50年)3月31日〜9月22日
NET(現・テレビ朝日)系
毎週月曜日19:30 – 20:00
全24話放送

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こちらはさらにどストレートに、人間のエゴ丸出して悪の化身の秀逸なキャラとして次々登場する事で知られています。

 

所有欲から生まれたサタンガメツク、金に汚いゼニクレイジー、人の生み出した公害から生まれたゴミゴン、ヘドロンガー、スモッグトン、人を傷つけたいという欲望から生まれたサドラーなどなど。ネーミングセンスが素晴らしいですね。

▲コレがオリジナルのゼニクレイジー。2019年のdocomo CMに登場しましたが、わかる人はアラフィフ世代です。

 

そしてこの連中、モンスター一族の狙いは日本、人間の支配。政治の中枢に入り込み、オイルショックやインフレなど当時の世相を反映した悪事を働き、それをコンドールマンのせいにして国民にコンドールマンこそが悪だと信じ込ませようとするなど、手口もなかなか姑息、まさに下衆の極みです。

 

正義の味方なのに一般庶民から疎んじられたり無視されたり嫌われたりするコンドールマンが不憫でした。

 

これが現代なら、ツイッターやSNSを炎上させる手口で、コンドールマンはさぞかし追い込まれた事でしょう。

 


 

●いまなら放送禁止、BPO間違いなし

 

氏自らが作詞した主題歌、さらには「死ね死ね団」の歌詞一つとってもわかるように、今なら放送禁止間違いなしの欲望剥き出しの過激な悪の描写のオンパレード、子ども心に「こんなの観てていいのか?」的な不安すら覚えるクレイジーな怪作シリーズですが、根底にあるのは「正義とは何か?」「人間とは何か?」そして「宗教とは?」。

 

これにはこの世代に共通する、太平洋戦争敗戦を契機に体験した一夜にして善悪が転換、というショックがあるのだと思います。

 

氏は脚本や設定のみならず、全楽曲の作詞も手掛けており、これはアンパンマンのやなせたかしさんに引き継がれていますね。

(ロールパンナちゃん、なんてレインボーマンそのまんまです。もっともアンパンマンはコスチュームが009ですが)

 

ただし、アンパンマンがあくまでも明るい正義のヒーローなのに対し、氏のヒーローはいずれももっとサイケでドロドロしてます。

 

現代の思想なき「反日」とは異なり、氏の想いは「あの過ちを繰り返してはならない」ということなのでしょう…。

 

もっともインパクトのある「死ね死ね団のテーマ」と、「コンドールマン」主題歌の歌詞をご紹介してこの回を終わります。

 

◆死ね死ね団のテーマ

死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死んじまえ
黄色いブタめをやっつけろ
金で心を汚してしまえ

死ね死ね死ね死ね
日本人は邪魔っけだ

黄色い日本ぶっつぶせ
死ね死ね死ね死ね死ね死ね
世界の地図から消しちまえ

死ね死ね死ね死ね死ね死ね

黄色いサルめをやっつけろ
夢も希望も奪ってしまえ

死ね死ね死ね死ね
地球の外へほおりだせ

黄色い日本ぶっつぶせ
死ね死ね死ね死ね死ね死ね

世界の地図から消しちまえ

 

◆コンドールマン

どこのどこのどこの誰から頼まれた
命をかける価値もない
それほど汚れたニッポンの
人の心が産みだした
「ゼニクレージー ゴミゴン スモッグトン ヘドロンガー」

悪魔の群に敢然と戦い挑み
愛を説き
あああ あああ今日も行く

正義を助けるコンドールマン

正義のシンボルコンドールマン

人の人の 他人の幸せ祈るより
わが身を守る欲の皮
それほど歪んだニッポンの
人のこころが産みだした
「ゼニクレージー ゴミゴン スモッグトン ヘドロンガー」

悪魔の群をけちらして
光をあたえ愛を説き
あああ あああ今日も行く
正義を助けるコンドールマン

正義のシンボルコンドールマン

 

 

おわり

コメント

  1. 大石良雄(本名) より:

    拝啓 くすぶる残暑の中サイトヘッド様にはよろしくお願いいたします。
    「思想無き愛国 見事なフレーズにして言い得て妙だが哲理としては浅い様なご無礼お詫び」
    川内康範(やすのり)氏とは一度面会させて頂きたいと願いつつ終ぞ機会が無かったのですが、「月光仮面 高速エスパー」等の製作元「宣広社プロに取材した際、田村Pや小林重役から、怪傑ハリマオの企画の際に念頭に在ったのは、日本人は戦時中にアジアで悪い事ばかりしていたのでは決して無かったのだ」と。この川内康範氏の思想の根底は「月光仮面や七色仮面等で語られる 人間とは全て平等であり罪を憎んで人を憎まず、殺すな愛しましょう」だと推測されます。この根底には「西洋宗教や思想では無く、日本古来の宗教や武士道に通ずる精神」が在ると感じています。確かに月光や七色は1950年代昭和30年代初期、その後1970年代昭和40年代に入り「レインボーマン、ダイアモンドアイ、コンドールマン」等では月光や七色で描かれていた思想背景では通用しなくなっていた=と言うよりも背景としては弱いと。
    其処で「設定として反日、憎日、愛国」といった今後ステータスに成りうる可能性の在るものを付け加えたと考えられないでしょうか? 元々川内康範氏は「  組の歌等の作詞」等もてがけ、一種独自の世界観を持っておられました。サイトヘッド様表記の「朝日系のテレ朝にこういった企画を持ち込む」等はある意味狂気の沙汰?であり、よくもまぁ企画が通ったと驚きますし、まず今日こういう「ある種常軌を失したプランニング」は絶対に稟議を通りません。
    思えば良い時代だったのかもしれず、そういわれましたら当時昼メロ等でさえも「三日月情話 渚より愛をこめて」なんてぇおよそとんでもねぇドラマが企画され放映されていましたね。
    確かに「PURATON様の言われる思想無き愛国」と言うフレーズ」は、「ただただ日本が好き、なんだかさっぱり解らねぇけんども反日は気分が悪い」程度の事なのか? この程度の可愛げのある低レベルの話なら少なくとも川内康範氏の様な作品には結び付き難いのでは?と。
    何せアジア某国の反日ってぇ思想なんぞ全く関係無く、中身も空っぽレベルが違いますのでね。このテーマは今後永く日本人の背負っていくテーマであり、PURATON様には勉強させて頂きました事、感謝いたします。 敬具

  2. puraton より:

    現代の思想なき「反日」ではなく、思想なき「愛国」ではないでしょうか。

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