昭和特撮「超人バロム・1」~1972 故・さいとうたかを原作の異色ヒーロー

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「ゴルゴ13」で知られる劇画の第一人者、さいとう・たかをさんが2021年9月24日、すい臓がんでお亡くなりになりました。

 

そこで今回は、氏の劇画を原作とする70年代の異色の特撮番組「超人バロム・1」を取り上げます!

「超人バロム・1」
制作 よみうりテレビ・東映
1972(昭和47)年4月2日~同年11月26日
日本テレビ系
毎週日曜19:30 – 20:00
全35話

 

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企画の経緯

 

この前年の1071(昭和46)年4月にスタートした「仮面ライダー」の大ヒットで、世は空前の”変身”ブーム。本作は、その仮面ライダーの”セカンド”として企画された番組です。

 

東映のプロデューサーは「仮面ライダーの生みの親」の一人、平山亨氏。「八手三郎」のペンネームで数多くの東映ヒーローを作り、主題歌の作詞も手掛けたお方です。

 

 

本作の最大の特長は、「仮面ライダー」から「キカイダー」「イナズマン」などに続く「原作 石ノ森章太郎」ではなく、「原作 さいとうたかを」という点でした。

 

平山氏はこの企画をよみうりテレビから持ちかけられ、「よみうりテレビとは初仕事だった上、巨人の星、タイガーマスクを指揮した佐野寿七プロデューサーとはぜひ一緒に仕事をしてみたかったので、嬉しかった」と語っています。

 

ちなみに放送枠の日曜19時半の前番組は、同じくよみうりテレビ制作のアニメ「ルパン三世」(第1シリーズ)でした。

ユニークな設定

 

本作は大人が変身するのではなく、少年が、それも2人が変身する点が画期的で、チャレンジングでした。本作のテーマは「友情」であり、変身後も体内で(右目と左目の中で)2人が会話しながら行動します。

2人変身はちょうど同時期に「ウルトラマンA」が男女で試みていて、後に3人で変身する「トリプルファイター」「魔人ハンターミツルギ」などに続きます。

 

変身後の姿は何とも言えないブルーがかったグレーとグリーン、黒色のスーツで、マスクは鳥をモチーフにしたそうです。

 

 

また、バイクに乗る仮面ライダーに対して、バロム・1はクルマ。後ろにホバークラフトのような巨大なプロペラが付いたオレンジ色のド派手な「マッハロッド号」はデザインもカッコよく、大人気でした。初期のベースカーはダットサン(日産)フェアレディだったそうです。

 

原作との相違点

 

さいとうたかをさん原作の劇画「バロム・1」は、1970(昭和45)年から約1年間、「タイガーマスク」と同じ「週刊ぼくらマガジン」に連載されていました。

 

 

ガリ勉(頭脳担当)とガキ大将(腕力担当)の少年二人が腕をクロス(バロムクロス)して変身、「平和と正義の力 コプーと悪と呪いの力 ドルゲの戦い」という設定は同じながら、細かい設定やストーリーは、大きく変えられています。

 

劇画では変身後の姿が素顔の大人(!)なのに対し、TV版ではヒーローらしいマスク。

 

これは当然マーチャンダイズ(玩具の販売展開)を意識したもので、「さいとうたかを先生の許可を得てデザインしてもらって変更した」と平山氏は語っています。(ちなみにさいとう先生本人も、子供2人が合体変身していきなり大人になることに違和感があり、「連載から2話くらいで失敗作だと思った」「仮面ライダーを見て、マスクを付ければよかったと思った」と語っています 笑)

 

また、変身する2人の少年も原作はTV版よりももう少し年齢が高め(作画のせいでそう見えるだけ?)で、作風も怪奇SFのテイストなのですが、TV版は「こども向けの特撮ヒーロー」として、アレンジされました。

 

敵のドルゲも、原作では大地震など天変地異を引き起こすスケールですが、TV版では「怪人」として描かれています。

 

 

また、少年が持っている「ボップ」は原作では姿の見えないドルゲの探知機として描かれていますが、TV版では友情パワーのバロメーターが表示され、「一定の数値にならないと変身できない」という設定が加わりました。このアイデアは、さいとう先生にも好評だったそうです。

 

そして原作には「マッハロッド号」は登場せず、ボップが変形した飛行機状の乗り物でした。

 

トラウマな怪人たち

 

番組の企画段階から「仮面ライダーとは違うものにしたい」という佐野Pの意向を受け、平山氏は試行錯誤しますが、やはりどうしても「仮面ライダーの二番煎じ」と見られることが多く、悔しかったとか。

 

敵は当初「クモゲルゲ」「エビゲルゲ」など生き物を怪人化したものでしたが、全35話の半分を過ぎたあたりから夏休みの怪談時期の「悪魔シリーズ」として、ドルゲ自身の肉体が変化した「クチビルゲ」や「ウデゲルゲ」などが登場。これがトラウマ級のグロテスクさで大反響を呼び、PTAから「怖すぎる」とクレームが殺到。

 

 

「苦し紛れだったが、ようやくライダーの呪縛から解放されて独自のカラーが生まれた」、と平山氏は語っています。

 

中でも22話に登場する「ヒャクメルゲ」、23話「ノウゲルゲ」回は、今ならBPO案件でしょう。怖すぎです。

 

 

歌詞の半分が擬音!インパクト大の主題歌

 

この「超人バロム・1」はなんといっても主題歌が有名。歌詞の半分が「ブロロロロ」とか「ギュンギュギュン」などの擬音からなり、一度聴くと忘れられない強烈なインパクトです。

 

さいとうたかをさんの原作にある擬音を活かしたアイデアでしたが、音楽を担当した作曲家の菊池俊介さんは当初「こんな歌詞に曲は付けられない」と難色を示したそうです(笑)。

 

超人バロム1 OP&ED

OP「ぼくらのバロム・1」
作詞:八手三郎/作曲:菊池俊輔/歌:水木一郎、コロムビアゆりかご会

ED「友情のバロム・クロス」
作詞:八手三郎/作曲:菊池俊輔/歌:水木一郎、コロムビアゆりかご会

 

「ドルゲ事件」で打ち切り?

 

本作を語る上で外せないのが、「ドルゲ事件」です。

 

放送開始から4ヶ月が過ぎた1972年8月25日、朝日新聞社に「魔人ドルゲは僕じゃない」「友だちがいじめる」「同姓の坊や 仮処分申請」などの見出しで、「神戸市に在住するドルゲ姓の音楽大学教授のドイツ人が、魔人ドルゲがもとで息子がいじめられると放送局に抗議し、名称使用差し止めの仮処分申請をした」との記事で報道され、社会問題となりました。

 

その後、9月26日に「悪玉ドルゲ、童心に降参」「11月で姿消します」「読売テレビが和解 ○○君の言い分通る」などの見出しで、弁護士を通じ和解が成立したとの報道がなされました。

 

佐野Pによれば実際は裁判にはなっておらず、「ドルゲという名前のせいで子供がいじめられている」という報道も誤りで、あくまで「いじめられる可能性がある」というクレームだったのだとか。「クレーム元の家に通い、制作の思いや意図、名前に他意がないことを伝えるうち、子供本人もバロム・1のオモチャで遊ぶようになり、最終的に親の了解を経て鎮静化した」のだそうです。

 

しかしこの抗議の影響で、なるべくドルゲの名前を使わない、ミスタードルゲ役の室田日出男さんを降板させる、さらに29話以降ではオープニングタイトルのラストに「このドラマにでてくるドルゲはかくうのものでじっさいのひととはかんけいありません」とのテロップを表示する配慮がなされました。

 

 

そして、本作品はこれが原因で「全35話という(当時としては)短命で番組終了となってしまった」と言われています。

 

しかし真相は、この事件が打ち切りの直接の原因ではなく、なかなか視聴率が伸びず、「やっぱり仮面ライダーは超えられない」と判断したから、と言われています。

 

 

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