昭和特撮「魔人ハンターミツルギ」~1973 特撮+時代劇+ストップモーションアニメの超異色作

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今回はリクエストにお応えして、1973(昭和48)年、フジテレビで放送された異色の時代劇特撮「魔人ハンターミツルギ」をご紹介します。

 

特撮+時代劇+忍者+ストップモーションアニメによる巨大ロボ+宇宙侵略という、盛沢山すぎな内容で差別化を図った超・意欲作ですが・・・

 

ただでさえ予算がかかる時代劇特撮に手間のかかるストップモーションアニメを加えるという自殺行為。
そのため全12話、放送期間3か月のため「知ってる人は知っている作品」となっています。

 

そのほか、キャラ設定やストーリー展開にもいろいろとツッコミどころ満載で、「人気がなくて打ち切り」という説もありますが、おそらく予算もスケジュールも、1クールが限界だったのでは・・・と思います。

魔神ハンターミツルギ
1973(昭和48)年1月8日 – 3月26日
フジテレビ
毎週月曜月曜19:00 – 19:30
全12話
プロデューサー 梅村佳史
制作 フジテレビ、国際放映

 

私は残念ながら、この番組を観た記憶がありません。それもそのはず、福岡はネットされていなかったようです。
ただ、以前ご紹介した「突撃!ヒューマン」と同じく、家にあった「テレビまんが主題歌集」にデカデカと(それもセンター!)ビジュアルが載っていたおかげで、長く「観たことないのに知ってる」作品でした。

 


 

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●特撮ヒーロー戦国時代

 

1973(昭和48)年は特撮ヒーロー番組の爛熟期。

ざっと挙げただけでも、仮面ライダーV3 と ウルトラマンタロウ を筆頭に、ロボット刑事キカイダー01イナズマン風雲ライオン丸鉄人タイガーセブン光の戦士ダイヤモンド アイ、ファイヤーマン、ジャンボーグA、流星人間ゾーン、白獅子仮面、レッドバロン、行け!グリーンマンなどが群雄割拠。19時台のゴールデンタイムTV欄を独占する、戦国時代でした。
*下線リンク作品は、個別コラムで紹介しています

 

当時のTV欄を見ると、「ミツルギ」の月曜19時~は真裏で「バビル2世」(NET:現テレビ朝日)、「ワイルド7」(日本テレビ)、「キックボクシング中継」(TBS)などの人気番組があります。

 

アニメやスポーツは別としても、「特撮」くくりでも既にあらゆるパターンが試行され済の時期であり、どう差別化するかに制作側はアタマを悩ませていたことでしょう。

 

 


 

●「魔人ハンターミツルギ」が異色すぎる理由

 

その時期に生まれたこの「魔人ハンターミツルギ」は、忍者モノ時代劇に巨大ロボを登場させ、さらには宇宙人の侵略モノでもあるのです。

そしてなんといっても最大のチャレンジは、巨大ロボの戦闘シーンが着ぐるみによる肉弾戦ではなく、「人形のストップモーション撮影によるアニメーション = アニクリエーション」である点です。そう、”特撮の神様”円谷英二氏にも多大な影響を与えたアメリカ特撮の始祖、レイ・レニー・ハウゼン(1920-2013)が得意とした手法です。

 

下にあるOP映像の中盤で、その模様を見ることができます。

 


 

●いろいろと「無茶」

 

舞台は江戸時代。蠍座から飛来した邪悪な宇宙忍者「サソリ軍団」が、妖術と怪獣を操り、家康暗殺による幕府転覆+日本占領を画策します。孫娘をサソリ軍団にさらわれた徳川家康は服部半蔵(将軍家直轄の秘密捜査官との説明)に命じ、”ミツルギ一族”に日本防衛を託します。

 

ミツルギ一族は徳川家に力を貸す義理はないのですが「罪なき民衆が苦しむ姿を黙って見ていられない」と一族の長老 道半が銀河、彗星、月光の三兄妹に「智」「仁」「愛」の力を宿した三本の秘剣を授けます。三兄妹はこの秘剣を合わせることで、巨大ロボ?大魔神?”巨大神ミツルギ”に変身。サソリ軍団の怪獣達と戦い、風のように去っていく・・・

 

というのが本作のストーリーです。

 

このミツルギ三兄妹、反権力といいますか作中でもけっこうアナーキーな行動をする連中ですが、まず頭にヘルメット、胸には手榴弾など、時代考証完全無視のスタイル。これはかつての人気番組「忍者部隊月光」へのオマージュでしょうか。敵の宇宙人サソリ軍団は江戸時代的な戦い方をするのに対し、三兄妹は平気で近代兵器を使いまくります。

さらにはこの三兄妹、「忍術」と称して変わり身の術(はまぁいいとして)、カラダのサイズを変える、時間を止める、などやりたい放題。そのためいくらピンチになってもちっともハラハラせず、モタモタすると「はやく忍術でなんとかしろよ」と逆にイライラするという、哀しい矛盾を引き起こしてしまいました。

 

善と悪とのパワーバランスは大事ですね。。。

 


 

●アニクリエーションの「冒険」

 

三兄妹が3つの刀を空にかざして合体変身する”巨大神ミツルギ”は、身長20メートル、体重4万トン。ですが当時の技術と予算の限界で、まるで巨大に見えずミニチュア感が抜けません。そしてこのアニクリエーションになると昼間でも黒雲が空を覆い、稲光がして真っ暗な画面になります。わかります、こうしないといろいろと大変なのでしょう。

 

ミツルギはデザインはカッコいいのですが、見た目にどちらかというと和よりも西洋の騎士っぽい。武器は神剣と盾。胸の紋章からは火炎弾(ミサイル)を発射。盾はブーメランにもなる。 もはや巨大神というよりロボです。当初は空は飛べませんでしたが、修行を経て時間制限付きで飛行も可能に。

対する宇宙怪獣はどれもこれも独創的というかユニークというかユーモラスというか。戦い方も着ぐるみでは実現不可能なユニークなものに仕上がっています。

 

ただ…当時の技術でスケール感のなさは否めないとしても、もう少し戦闘の緊張感とかカタルシスがあればなぁ、と思ってしまいます。戦闘シーンは毎回かなり短い尺で、暗い中で人形がちょこちょこと動き、最後はミサイル発射で怪獣が燃えておしまい。

 

ぶっちゃけ着ぐるみでやった方がラクでしょうに、と思えるほどに手間暇かかっているだけに・・・「週1回放送の30分番組の予算とスケジュールの限界」だけは画面越しにヒシヒシと伝わっては来るのですが(笑)

 


 

●主題歌

 

OP「走れ!嵐の中を」
作詞:雨宮雄児 / 作曲:水上勉
歌:水上勉、コロムビアゆりかご会

三味線が入ってます。

 


 

時代劇+特撮といえば「仮面の忍者赤影」「怪傑/風雲ライオン丸」「変身忍者嵐」などがありますが、本作はその中でも「成功」ではなく「異色」としての評価です。それはやっぱり、巨大ヒーローものであり、アニクリエーションに尽きるのです。

 

CG全盛のいまなら楽勝なことも、ミニチュア動かして、となるとさぞかし大変だったことでしょう。

 

ただ、本作は「サンダーマスク」「突撃!ヒューマン」とは違い全話がDVD化されていて、きちんと観ることができるのは幸いです。

 

<関連リンク>

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