昭和特撮「ジャンボーグA/ジャンボーグ9」~1973 円谷プロの異色ダブル・ヒーロー

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今回は、1973年に放送された円谷プロの特撮番組「ジャンボーグA(エース)」「ジャンボーグ9」を取り上げます。

 

 

「巨大ヒーローが宇宙人ではなくサイボーグ(ロボット)」「主人公が変身するのではなく操縦する」そして「番組途中でヒーローが変わる」など、他の円谷作品とは異なる特色があり、放送当時、毎週楽しみに見ていた記憶があります。

 

 

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概要

 

「ジャンボーグA」
1973(昭和48)年)1月17日〜12月29日
NET系/全50話
毎週水曜19:30~20:00
(10月6日からは土曜19:00~19:30)
制作:毎日放送、円谷プロダクション

あらすじ

地球から遥か15光年離れたグロース星から、グロース星人が巨大怪獣による地球侵略を開始した。グロース星人に兄を殺された民間航空のパイロット・立花ナオキは、宇宙全体の平和を願う地球の兄弟星・エメラルド星人から、地球を守るための巨大ロボット「ジャンボーグA」を贈られる。

ナオキは愛機の小型プロペラ機(セスナ)から変形するジャンボーグAを駆り、防衛戦で戦死した兄が隊長を務めていた地球パトロール隊PATとともに、グロース星人と戦う。

第27話からは、軽自動車(ホンダ・Z)から変形する2号ロボ、ジャンボーグ9も登場。ナオキがAと9を状況に応じて使い分ける。

 

 

ジャンボ+サイボーグ=ジャンボーグ

 

「ジャンボーグA」は、同年放送の「ファイヤーマン」そして「ウルトラマンタロウ」と並ぶ、「円谷プロ創立10周年記念番組」と銘打たれました。

 

 

明るい作風で、熱血で暴走し、失敗しがちな主人公・立花ナオキの成長を描くなど、当時人気の高かった「青春ドラマ」を意識した作りになっていました。

 

 

さらに放送局が同じ毎日放送であるためなのか、敵組織などの設定にそこはかとなく「仮面ライダー」っぽさを感じます。

 

なんといっても本作の最大の差別化ポイントは、「ヒーローがロボット(サイボーグ)」である点でしょう。

 

タイトルの「ジャンボーグ」とは、「ジャンボ」と「サイボーグ」を合わせた造語。

 

そう、この見た目にウルトラマンチックな巨大ヒーローは宇宙人ではなく、「エメラルド星人(ウルトラマンにクリソツ)から贈られた巨大ロボット(番組中では“巨大なサイボーグ“と呼ばれる)」なのです。

 

 

当時、サイボーグとロボットはどちらも「子どもにウケるヤツ」であり、その境界線は非常に“曖昧“でした。

 

 

サイボーグなら強化人間ですから、主人公がそのまま戦うハズなのですが、このジャンボーグAでは、主人公のナオキが乗るセスナが変形してジャンボーグAになります(当時の子どもたちはこの番組で、小型飛行機=セスナの存在を知りました)。

 

 

この時、ナオキは体内に「搭乗」して「ロボットを操縦」しているように見えました。

 

なので当然、この設定は当時人気絶頂だった「マジンガーZ」など、巨大ロボットものを意識したのかと思いきや…

 

なんとこの「ジャンボーグA」の原型となる企画は、それより遥か以前の、「ウルトラマン」が放送された1966(昭和41)年なのだそうです。

 

原点は小学館学年誌とのタイアップ企画

 

その企画がその後、1970(昭和45)年に「ジャンボーX」という巨大ヒーローマンガとなり、小学館の学年誌で連載(1970年4月号〜9月号)されました。

 

 

この時期は「ウルトラセブン」が放送終了して「帰ってきたウルトラマン」が始まる1972(昭和47)年のあいだの空白期間で、第二次怪獣ブームに向けての「助走期間」でした。

 

TVで特撮ヒーロー番組が放送されないタイミングでの、「ウルトラマンに代わってウルトラ怪獣と戦う、オリジナルヒーロー」でした。

 

この小学館学年誌とのタイアップで誌面で先行デビュー、後にTV番組化されたヒーローとしては「ミラーマン」(1969年9月号〜1970年3月号)が有名です。どちらも雑誌時とTV番組ではデザインが異なっています。

 

 

番組の垣根を超えた「ジャンボフェニックス」の登場

 

そして本作を語る上で欠かせないのが、第32話に登場するジャンボフェニックス。これは「ミラーマン」の防衛隊、SGMの戦闘機です。

 

 

しかも登場していたSGMの村上チーフが、そのまま本作の防衛隊であるPATの隊長になる、という胸熱な展開!当時の子供たちはよくわからない中、大興奮しました。

 

「こうなるとミラーマンも出て来てジャンボーグAと一緒に戦うんじゃね??」と期待しましたが…残念ながらそこまでは実現しませんでした。

 

この裏側には、円谷プロが当時描いていた「銀河連邦」構想があったのでした。

 

「銀河連邦」構想とは?

 

「ウルトラQ」に始まる円谷プロ作品は、「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「マイティジャック 」「怪奇大作戦」などが放送された当時、それらはあくまで単体の企画で、それぞれの世界観につながりはありませんでした。

 

その後、「帰ってきたウルトラマン」にハヤタとダンがゲスト登場し、小学館の学年誌などで「ウルトラ兄弟」の設定が生まれました。

 

 

1971(昭和46)年8月号の誌面上でゾフィー、初代ウルトラマン、ウルトラセブン、帰ってきたウルトラマンの4人を兄弟と設定したのがウルトラ兄弟の始まりとされ、続くウルトラマンAでは初めから「ウルトラ兄弟の新しい弟」として、迎えられました。

 

 

さらに円谷プロは、第二次怪獣ブームでバラバラのTV局でスタートした新番組を「円谷プロの作品はそれぞれ独立したものではなく、共通の世界設定のもとに存在する」と半ば強引に結び付ける“裏設定”を打ち出しました。

 

それが、「銀河連邦」構想です。

 

この時期の円谷プロの作品が、「ミラーマン」「ウルトラマンA」「トリプルファイター」「ファイヤーマン」そして、「ジャンボーグA」でした。

 

(ちなみに「ウルトラマンA」の主題歌に出てくるのは銀河連「峰」。この構想とは別ものなのか、単なる誤字なのか、徹底されてないだけなのか、諸説あります)

 

しかしこの構想、セリフや書籍などで語られてはいたものの、まるで定着せず、“幻“に終わります。

 

時は流れて21世紀。この銀河連邦構想は「ウルトラセブンの息子」ウルトラマンゼロが、ミラーナイト(ミラーマン)、ジャンボット(ジャンボーグA)、ジャンナイン(ジャンボーグ9)と“ウルティメィトフォース・ゼロ”を結成して共に戦う事で“復活“しました。

 

 

主役交代、ジャンボーグ9登場

 

本作のもう一つの特長が、「特撮ヒーロー番組史上初」と言われる、主役交代劇。もう1人のヒーロー、ジャンボーグ9の登場です。

 

この時代、番組が終了して新番組で新しいヒーローが現れるのがあたりまえで、番組が終わらずに(主人公もそのまま)ヒーローが変わるのは、斬新でした。

 

27話でジャンボーグAがジャンキラーによって倒された後、ジャンキラーに特攻を試みた立花ナオキ。

彼の乗る軽自動車ジャンカーZ(ホンダZ360GT)にエメラルド星人が2つ目の命を与えることで誕生した二号ロボット(サイボーグだろ)が、ジャンボーグ9です。

 

 

私は当時、どのようにこの主役交代を受け入れていたのかさすがに覚えていませんが、変身アイテムがセスナからクルマに変わり、四角かった顔が星型の奇妙なマスクのヒーローへ。

 

 

 

ジャンボーグAがいなくなるのは悲しいけれど、新しいジャンボーグ9もカッコイイじゃん、とすぐ馴染めた…のかなぁ…。それより水曜日はなぜか夕食に「そぼろご飯」が多くて、「ジャンボーグといえばそぼろご飯」の記憶しかない・・・(笑)。

 

それでも、この主役交代は救いがありました。なんと後にジャンボーグAもまた出てきて、「状況に応じてAと9を使い分ける」という設定だったのです。

 

ジャンボーグ9は「腕力・脚力と装甲はジャンボーグAより強いが、クルマが変形しているため空が飛べない」という弱点がありました。後から出てきたのになぜ飛べない…(笑)

 

さらにこのジャンボーグ9、操縦がなんとクルマのハンドルでして…(ボスボロットかよ)これで敵と戦うのは、なかなか大変そうでした。さらには元がクルマだけに、エンストやガソリン切れで窮地に陥ることもありました。

 

 

ダブルヒーローの共闘

 

このジャンボーグAと9、どちらも主人公ナオキが操縦するため、2人同時に戦うことはできません。

 

しかし第47話で9が敵に奪われたことでAとの対決が、その後、取り戻した9にエメラルド星人が乗り込むという流れで、「共闘」が実現しました。

 

それ以外にも、9が負けた相手にAで勝つ、Aで負けた相手に9で勝つ、という具合に、ダブルヒーローならではの面白さを演出していました。

 

感動の最終回(ネタバレあり)

 

最終決戦はなんと月面。先行して戦ったAが敗れるも、9は空が飛べない…瀕死のナオキはPATの観測用大型ロケットを強奪(!)して再び月へ。

 

9で最終決戦を制したものの、地球へ帰還する術がないナオキは、地球を眺めながら「月の砂漠」を口づさみます。

 

そこへPATが登場!9とナオキは無事、地球への帰還を果たしハッピーエンド…

 

しかしラストシーン、月面で復讐を誓うグロース星人の「「我々は必ず地球を手に入れてみせる。必ず…必ず…」という不気味な声が…

 

 

この胸熱な大逆転や意味深な終わり方、初期からの設定の回収など、「数ある特撮ヒーローものの最終回の中でもベスト」との評価も多い、傑作なのです。

 

事実、人気も高く延長も視野に入ってたそうです。ラストシーンの敵組織の復讐を誓う声がそれを物語っています(新たな敵幹部も予定されていたとか)。しかし、残念ながら実現しませんでした。

 

主題歌

 

ジャンボーグA
作詞:清瀬かずほ / 作曲・編曲:菊池俊輔 / 歌:谷あきら、荒川少年少女合唱団

 

戦え! ジャンボーグ9(第27-34・43話)
作詞:清瀬かずほ / 作曲・編曲:菊池俊輔 / 歌:谷あきら

 

子門真人さんが「谷あきら」名義で歌っています。

コメント

  1. マークン より:

    当時リアルタイムで見てました。もう1人の主人公が出てきてジャンボーグ9を操縦するという方がストーリーに広がりが出たのではないかなと今では思っています。この作品を取り上げている特撮本は少なからずありますが、主人公を演じた俳優さんのインタビューが載る事がないのが残念ではあります。

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