昭和特撮「マイティジャック」〜1968 早過ぎた?円谷プロの異色特撮ドラマ

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懐かしの昭和特撮シリーズ。今回は、1968(昭和43)年にフジテレビで放送された「マイティジャック」(と、その続編「戦え!マイティジャック 」)をご紹介します。

本作は、円谷プロが“大人向けSF特撮ドラマ“を狙った意欲作。しかしながら結果的に大コケし、円谷プロの経営に大ダメージを与える作品となってしまいました。

 

私の幼少期、他の特撮番組と違いまったく再放送されず、長く“幻の作品”でした。

 


 

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「マイティジャック」

 

1968年(昭和43)年4月6日-6月29日
フジテレビ系
毎週土曜20:00-20:56
制作 円谷プロダクション
フジテレビ
全13話

 


 

●マイティジャックとは?

 

1968(昭和43)年。円谷プロダクションは前年から放送中の「ウルトラセブン」(TBS)に加え、4月からこの「マイティジャック」(フジテレビ)をスタートさせます。TBSは「ウルトラQ」「ウルトラマン」。日本テレビは「快獣ブースカ」。「マグマ大使」のフジテレビとしても、待望の円谷プロ特撮番組でした。

 

コンセプトは「サンダーバード」のメカニック特撮+「007」のスパイアクション。怪獣や宇宙人は登場せず、悪の組織「Q」から世界平和を守る秘密組織「マイティジャック」のメンバーの活躍を描く人間ドラマです。

 

主演に元 日活の大物俳優、二谷英明氏を迎え、制作費も当時としては破格、史上最高額と言われた1000万円を投じた「国産初の1時間枠特撮ドラマ」。ほかキャストには東映の南廣氏(ウルトラセブンで宇宙ステーションにいる、キリヤマ隊長の親友役のあのお方)天野英世氏、二瓶正也氏ら、当時の特撮でおなじみの顔触れが揃いました。


 

●主題歌は冨田勲さん作曲の名曲

 

音楽担当は、日本におけるシンセサイザー奏者の始祖的存在の冨田勲さん。当時、NHK「新日本紀行」「大河ドラマ」のほか、「ジャングル大帝」「リボンの騎士」「キャプテンウルトラ」など、子ども番組のテーマも手掛けておられました。この主題歌は大海原を連想させる雄大かつロマンティックな名曲です。

 

 


 

●視聴率低迷で打ち切り

 

期待を背負って発進した「マイティジャック」ですが、視聴率が平均8.3%と衝撃的な低迷。全26話の予定が13話で打ち切られました。失敗の原因は…二谷氏がヘルメットとか制服とか着たくないとフジテレビ、円谷プロとモメた、などいろいろと語られていますが…端的に言えば「大人も子供も見なかった」事でしょう。

 

ヒーローはもちろん怪獣や宇宙人がまったく登場せず、大人向けドラマとしてはリアリティが今ひとつ。どっちつかず、となってしまい、土曜夜8時、ドリフターズの「8時だよ全員集合!」の裏としては地味過ぎました。

 


 

●特撮メカニック

 

この番組の見所は「サンダーバード」を意識したメカニック描写。マイティ号は空も飛べる万能戦艦。1963(昭和38)年の東宝映画「海底軍艦」、企画のみに終わった「空飛ぶ戦艦」の流れを組むメカで、「ウルトラセブン」から引き続き、成田亨氏によるハイセンス デザインは今なお、人気を誇ります。

円谷プロの総帥「特撮の神様」円谷英二氏は「大人の鑑賞に耐えうる特撮番組」を目指し、並々ならぬ熱意を傾けて本作用に超高速度撮影可能な映画用35mmミッチェル キャメラを導入。迫力あるマイティ号発進シーンなどで威力を発揮しています。


 

●続編制作の経緯

 

期待作「マイティジャック」はセット、ミニチュアなど初期費用に当初予定の26回分予算をすべて投入してしまっており、打ち切りとなるとフジテレビとしても大赤字必至です。そこで言わば“敗戦処理的処置”として子供向け30分番組に仕切り直し、続行となります。

 

「戦え!マイティジャック」

1968(昭和43)年7月6日 – 12月28日
土曜 19:00 – 19:30
フジテレビ
全26話
制作 円谷プロダクション
フジテレビ

 


 

●作風を変え再スタート

 

タイトルと放送枠を変え、「子供向け30分番組」として再スタートした「戦え!マイティジャック」は、残りの13話を半分の放送時間(30分)では…ということで、計26話が製作、放送されました。

 

また、大幅な設定変更が行われ、オープニングはウルトラ シリーズを思わせる作りに。音楽にも「ウルトラQ」「ウルトラマン」の宮内國郎さんが加わります。

 

レギュラー隊員は11名から5名になり、二谷氏に代わる隊長は前作で副長を務めた南廣氏。新たに後の「ライダーマン」「電人ザボーガー」の山口暁氏らが加わりました。

さらに2クール目からは毎回怪獣が登場する「なんでもぞくぞくシリーズ」に路線変更。

しかし、またしても裏番組が「巨人の星」という…つくづくツイてないですね。

 


 

●「マイティ号を取り返せ!」

 

12話、13話の前後編では「ウルトラセブン」終了直後のモロボシダン役の森次晃嗣氏が謎の風来坊役でゲスト出演。「ウルトラマン」イデ隊員役の二瓶正也氏と“夢の共演”して話題になりました。

また、この前編での悪の組織に奪われたマイティ号による東京のコンビナート攻撃シーン、自衛隊との空中戦、そして911テロを予見したかのような、当時完成したての霞ヶ関ビルへの突入シーンほか、ド迫力の特撮は語り草です。

 

 


 

●その後の評価

 

このように、放送当時は視聴率が低迷してしまった不幸な番組であり、なぜか再放送もなく、長く記憶の中に封印されてしまっていました。

 

しかし当時の技術を集結した特撮はその後の特撮、アニメにも大きな影響を与え、「円谷プロ特撮の最高傑作」と一部で熱狂的な支持を集めています。マイティジャックのマークが円谷プロの社章になっていることでも、その思い入れの強さがわかります(正確にはマイティジャックの方が流用なのだそうですが)。

 

中でも「エヴァンゲリオン」「シン・ゴジラ」監督の庵野秀明氏は熱狂的なマイティジャック マニア。東京都現代美術館で開催された「館長 庵野秀明 特撮博物館」で全長3メートルのマイティ号撮影用モデルを復元して話題になりました。

2000年代からDVD-BOX、HDリマスター化などが続き、再評価の声が高まっています。

コメント

  1. 大石良雄(本名) より:

    拝啓 サイトヘッド様には、相変わらずの残暑の中 よろしくお願いいたします。
    *「詰めの甘さが招いた一大悲劇 これだけの優良素材を活かしきれなかった愚円谷」
     忘れられませんのは、この「MJ=マイティジャック」制作発表の際、各報道陣集めてのかなり豪華絢爛な発表会がありまして、一部写真などが残されております。
    とにかくまずキャスティングが豪華で、何故か主役を張れる役者さんたちが数人居てはたして良いのか?悪いのか? 当時から迷いました。楽しみでした女優陣も「久保菜穂子 池田和歌子」等スタイリングの良い美人女優ばかり、、、更にゲスト女優さんたちも「斎藤チヤコさん」他なかなか良い女優さんたちが毎回出てきて、、、実は初っ端から結構きわどいシーンも在ったりして、、、しかし当初から見ていて(当時小学生でしたが) この時間は大人の時間帯と言われていた放送枠で、実はこれ以前「東映アニメのレインボー戦隊ロビン」も夜8時と言う不思議な時間に放映されていたことがあり、かなり疑問を感じていました(結局観られなかった) 一番の失敗要因は「何処の誰を どんな視聴者にターゲットを絞って企画されたのか?」ではなかったのかと。結局大人へも子供へもどっちつかずで、終始安定しなかったのだと。ストーリー的にはかなり大人路線であり「怪獣もモンスターも宇宙人も何も出ない」けれど何となく「東映路線のその後のキーハンター等の路線から、コメディタッチを抜いた様な路線」を狙っていたのでは?と推測されます。しかしこのキャスティングでは少々重すぎた様です。更に「円谷英二の頭の中にはおそらくはサンダーバードのイメージが在ったらしい」が、決定的に欠けていたのは「本部でのコントロールルーム=中央総合指令所のセット」です。
    何故かこういったシーンは全て「MJ号の内部だけ」でしたね。柳栄二郎扮する総裁室には電話と百科事典しか無かった、、、、これではサンダーバードの二番煎じにもならねぇと。
    あれだけの超大型MJ号を操るには、当然ながら物凄いバックが無ければならないのに、指令室も、格納倉庫も、工場も、全てぼやかしていた。これであれだけの予算を食らったというのはおそらくは「迫力出す為の35mキャメラ撮影だのハイスピードキャメラだの、おそらくはもう手いっぱいだったのでしょう。つまり予算の配分すら出来なかったのだと。しかし、、、
    *「特撮TV歴史に残る素晴らしいテーマ曲 冨田勲先生のトミタマジックとは?」
     そんな悲惨な状況の中でも、本当に素晴らしかったのが「冨田勲先生のテーマ曲&BGM」でした。とにかく「物凄いスケールの巨大さ 大きく派手でクラシカルなオーケストレーション」で度肝抜かれたのです。作詞の清瀬かずほは監督満田の偽名であり、まぁ本当に言葉を唯単に並べただけの素人丸出しの作文を、冨田勲先生はものの見事に「音楽にした」のです。
    やはり大巨匠天才は違う、、、違うのです。特徴は当時は当然録音は一発録りであり相当数大人数のオケ=弦も相当数多くハープにティンパニーと豪華絢爛、しかもよくよく聴けば「イントロ以外メーンのテーマ曲全体が、セットドラムスのリムショットのみ」で演奏されている。このリムショットがまた効果的なのです。しかも大規模なエンディングはリズム楽器が休止し生オケのみで豪華に終わるという生々しさ。フールサンズ合唱団なる得体のしれないおそらくは寄せ集めのコーラス(もしかして準主役の南廣さんの声も入っているかも) も下手な部分を冨田先生のオケで上手く隠されている。BGMも非常に重厚で、何故か「サンダーバードの大暴走 クラッヴロガーを思い起こさせるような曲」も在ったり、正直リズミックで楽しい様な、ある意味「ノー天気」な曲は無いものの、素晴らしいサントラでした。しかしこの傾向が、必ずしも受け入れられなかったのが 実は
    *「戦え!マイティジャック 仕切り直しの消化番組 もう一人の作曲者加わる」
     ご承知の様に「打ち切りを免れるも消化試合の様相を呈した戦え!MJ」には、「UQ/UMで担当した宮内圀郎さんが加わり」二人体制となりますが、この宮内さんはMやQでも解る通り「冨田勲先生の様な作曲編曲は到底出来ないが、逆に冨田先生には出来ない曲を書けた」ので、仕切り直しの新路線=子供向けの何でも在り作品にはうってつけだったのでしょう。
    30分物に格下げの為にリズムもテンポも早まり、ある意味面白くなってきたのですが、MJ本来の重厚さは失われてしまった様です。こうしてMJはある意味討ち死にするのですが、その後円谷では終ぞこういうスケールの大きな作品は造られる事無く、その後冨田勲先生は「恐怖劇場アンバランス」で再び音楽担当されるのですが、今度は怖すぎてスポンサーがつかないという悲喜劇を生み長く放送されませんでした。残念ですが「しつこいくらいに細部を詰める」努力を怠った悲劇のMJ、心の隅にひっかかります。敬具

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