昭和特撮「仮面ライダー」1971-1973 〜「シン・仮面ライダー」前に知っておくべき”原点にして至高”

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2021年4月3日、初回放送から50周年を迎えたこの日に東映から庵野秀明監督による「シン・仮面ライダー」の制作が発表され、大きな話題を読んでいます。

そこで今回は今さらながら、昭和の第1作「仮面ライダー」の魅力について取り上げます。

私は以前も紹介した通り、次作の「仮面ライダーV3」がリアルタイム。「仮面ライダー(1号、2号)」は再放送世代です。さらに私の地元(福岡)ではほとんど再放送されず、しょっちゅう再放送されていた大阪の子どもがうらやましかったですね…

 

おまけに全98話とロングランの番組なので、ところどころ抜けてたり、かなり記憶が曖昧でした。正直言うと昨年からのMXテレビでの再放送で、はじめて通して観たのです。

 

改めて観ると、知ってるようで知らないこともたくさんあり、新鮮な驚きがありました。今回はそんなポイントもご紹介します。

 

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「仮面ライダー」とは

 

1971(昭和46)年4月から1973(昭和48)年に、全98話が放送された仮面ライダーシリーズの第1作。最高視聴率30%の大ヒットとなり、等身大のヒーローが「変身!」するポーズや「ライダーキック」などの必殺技が子どもたちの間で大流行し、社会現象となりました。

 

「仮面ライダー」
1971年4月3日~1973年2月10日 全98話
毎日放送 東映
NET系列 毎週土曜 19:30-20:00

原作:石ノ森章太郎
脚本:伊上勝 ほか
監督:山田稔 ほか
出演:藤岡弘、佐々木剛、千葉治郎、宮口二郎、天本英世、潮健児、丹波又三郎、小林昭二
声の出演:納谷悟朗
ナレーター:中江真司

主人公は天才大学生

 

本郷猛、仮面ライダー(藤岡弘、さん)は知能指数600、スポーツ万能の大学生。

 

オートレーサーとしても活躍し、親代わりのバイクトレーナー立花藤兵衛(小林昭二さん)の指導のもと、世界レース大会に向けたトレーニングに励む最中に突然、「悪の秘密結社ショッカー」に誘拐され、改造人間に。

 

脳改造の直前に脱出したものの人間の体を失い、苦悩を抱えながらも人類の平和のためにショッカーと戦う…というのが基本設定です。

 

藤岡さんは当時25歳。長髪に精悍なマスク、細身のプロポーションで大人気でしたが、いま見るとこの頃から貫禄があり、大学生には見えません(笑)藤岡さんは当時、変身後も自ら演じていて、危険なアクションも体当たりでこなしています(それが後に大事故につながるのですが…)。

モチーフはなぜバッタ?

 

仮面ライダーのモチーフはバッタ。驚異的な跳躍力はそのなごりです。

 

本作は、毎日放送の斎藤営業局長が、渡邊亮徳さんを通じて東映に企画を依頼したのが発端とされます。新しいヒーローを誕生させようと考えた東映は「タイガーマスク」や「月光仮面」などを参考に、

・仮面を被る
・バイクに乗る

というコンセプトを発案。

 

企画は東映の平山亨プロデューサーにより1970年初頭に書かれた「マスクマンK」に始まり、「仮面天使(マスク・エンジェル)」「十字仮面(クロスファイヤー)」などを経て、漫画家の石ノ森章太郎さんにデザインを依頼します(この時点での主役候補には近藤正臣さんなどの名前が挙がっていたそうです)。

 

石ノ森先生はかつて自身が手がけた髑髏をモチーフにした「スカルマン」を提案しますが、「オリジナルでない」「グロテスクで営業上好ましくない」などの理由でNGに。なんとか怪奇的なデザインを、と考えた石ノ森先生は昆虫図鑑を参考に、ドクロに近いバッタをモチーフにすることを思いつきました。

 

TV局などからは「まだグロい」「昆虫は弱々しくヒーローのイメージではない」などと反対されますが、石ノ森先生は「息子が50以上あるデザインからこれを選んだ」と主張し、平山プロデューサーも「バッタが人間サイズになれば強く、跳躍力がすごいものになる」と反論。

 

また当時、公害が社会問題化していたことも背景に「バッタは自然の象徴。バッタの能力を持った主人公が、風をエネルギーにして自然破壊に立ち向かう」という設定も加わり、採用されましたが、当初はバッタであることは伏せて「昆虫の能力を持った改造人間」としてセールスされていたのだそうです。

悲哀のヒーローと涙ライン

 

仮面ライダーは、秘密結社ショッカーの手で生み出されたヒーローです。「わかりやすい正義の味方」ではなく、誕生の悲劇から「主人公は哀しみを背負って戦う」ことが宿命づけられました。

 

「サイボーグ009 」をはじめとする石ノ森ヒーローはいずれもこのスタイルで、後の「キカイダー」や「イナズマン」なども同様です。孤独で陰があり、葛藤しながら戦う姿が、人間ドラマとしての深みをもたらしました。

 

現在に至るまで、ほぼすべての仮面ライダーのマスクには「涙ライン」という、泣いているように見える線がつけられています。これは「同族と戦う運命にある仮面ライダーの悲しみが、デザインに投影されている」といわれています。

あわや打ち切りの大事故、2号ライダー誕生

 

こうしてスタートした「仮面ライダー」ですが、藤岡さん演じる本郷ライダーはわずか13話で突然、姿を消し、第14話からは主人公が「フリーカメラマンで柔道6段・空手5段の一文字隼人(佐々木剛さん)」に変わりました。

予告も何もなく、いきなり主人公が変わり、当時の子供たちは混乱したことでしょう。ドラマでも「自分もショッカーに改造された仮面ライダーだが、本郷猛に助け出された」「本郷猛は日本を離れ、ショッカーのヨーロッパ支部と戦っている」などの詳しい説明は後付けで、あまりに唐突な主役変更でした。

 

これは撮影中のバイクの転倒事故で藤岡さんが大腿骨粉砕骨折の重傷を負い、続行不可能になったための措置。藤岡さんは記念すべき初放送を、病院のベッドで観たのだそうです。

 

藤岡さんと佐々木さんは劇団NLT時代の同期で友人の間柄。佐々木さんは「藤岡が戻ってくるまで」との約束で急遽、引き受けました。佐々木さんは他のドラマにも出演中で、おまけにバイクの免許もなく、撮影の合間に取得するドタバタぶりだったとか。

 

さらには藤岡さんの怪我はひどく、再起不能と見られていました。そのため当初は「1号、2号」という設定ではなく、あくまで「仮面ライダーが交代した」という感じでした(内部では本郷猛は死んだ、としたらどうかとの意見も出たそうです)。

 

ちなみに藤岡さんが大怪我をしたのは9-10話の撮影中。そこから第13話までは本郷猛は劇中に登場せず、いきなり変身していたり、過去のシーンをつないで、声優の納谷六朗さんが声をアテレコしてかなり強引につないでいます(ショッカーの首領の弟がライダーの声を担当というのも面白いですね)。

 

新キャラの滝和也(FBI捜査官)が登場したのも、このタイミングでした。演じるのは千葉真一さんの弟、千葉治郎さんです。

主題歌も変更、変身ポーズの誕生

 

2号ライダー初登場となる第14話で初めて、変身ポーズが登場します。また、主題歌も藤岡さん歌唱から藤浩一(子門真人さん)バージョンに変わりました。

 

初期の仮面ライダーはサイクロン号走行時、腰の変身ベルトが風圧を受けることで変身する、という設定でした。両腕を廻す変身ポーズが誕生したことで子どもたちもマネしやすくなり、さらに人気が加熱。のちに復帰する本郷ライダーも変身ポーズを使うようになり「仮面ライダー=変身ポーズ」となって、今に続いています。

 

ちなみに最初の変身シーンは「変身ポーズをやりかけてから慌てて上着からベルトを見せて、またポーズの続きをやる」というヘンテコなものになってるのは有名です。これは事前にしっかり決まってなかったとも、フィルム代が高くてNG出せなかったから、とも言われています(笑)。

また、改めて「仮面ライダー」を観るとかなり初期から、“変身後の“ライダーが、殺陣の中であの「変身」ポーズを取っているのがわかります。

 

これ以外にも2号ライダー登場を契機に、

・舞台をスナックからレーシングクラブに、レギュラーヒロインを増やす
・一文字隼人はユーモラスで都会的なキャラクターに
・仮面ライダーのデザインをやや派手に、夜間撮影時に暗闇にとけ込みにくい配色に

などのマイナーチェンジが行われています。

 

若き日の島田陽子さんや山本リンダさんが出演してるのも、知らない人からするとビックリかもですね。

藤岡さんの壮絶なリハビリ

 

撮影中の大事故とは、藤岡さんが乗るバイクが走行中にバランスを崩して転倒。電柱を支えていたワイヤーに足を引っ掛け体が空中高く飛び、地面に落下。「大腿部複雑骨折、全治6ヵ月の重症」というものでした。

しかも救急搬送された病院では昔のままの固定する治療法しかなく「仮に完治しても障害が残る」と言われました。藤岡さんは母親と共に他の病院に「脱出」。「ベトナム戦争で開発された新しい手術方法」と過酷なリハビリを重ねて、奇跡の復活を遂げました。

 

藤岡さん曰く

「割れた骨の破片が筋肉に食い込み、筋肉を切ってピンセットで一つ一つ外して、大腿骨の骨髄の中に金属パイプを通して骨にジョイントして、それに骨の破片を全部くっつけていて針金で巻いた」

「リハビリは切った筋肉を回復させるために無理をしてでもそこに力を加えなければいけない」「毎日高熱を出しながら、残された筋肉を巨大化するためには圧を加えて膨らませ、切ってしまった筋肉を補って回復させていくしかない」

 

…どうですか、まさに“リアル改造人間“。ショッカーもびっくりの過酷さです。藤岡さんのあの鬼気迫る迫力の理由がわかりますね。

「ダブルライダー」登場でさらにブームが加熱

 

その間、仮面ライダーは一文字隼人をメインに進み、変身ポーズもあり人気はさらに高まります。

そんな中、藤岡さんが奇跡の復活。

 

復帰作で初のダブルライダー登場回は第39話。大ヒットと正月を兼ねて九州桜島、えびの高原でのロケーションが敢行されました(この時登場したライダー1号は「桜島ライダー」として、今もフィギュアなどで高い人気を誇ります)。

藤岡さんは医師に「補強のため脚に埋め込んだままの鉄骨が撮影で曲がったら一生歩けなくなる」と猛反対されるも、ひた隠しにして参加。それも最初のシーンは負傷した際と同じバイクの運転だったのだとか。

夜には「傷口を抑えたタオルから血が噴き出て、洗面器が真っ赤になった」。しかし、出演シーンではそんなことをまったく感じさせない見事な復活でした。

 

この「ダブルライダー」で人気はさらに加熱。第53話からは南米に旅立つ隼人に代わって本郷が本格復帰し、リニューアルされた「新ライダー1号」となります。これは「藤岡が復帰するまで」という、佐々木さんの強い意向によるものでした。

第1回放送の関東での視聴率は8.1%、関西では20.5%を記録。

 

事故による主役交代を機に行われたテコ入れ策で着実に視聴率を伸ばし、9月末頃には平均して関東で15%、関西で20%を超えるように。

 

全98話の平均視聴率は関東が21.2%、関西が25.9%。最高視聴率は関東が30.1%(ダブルライダー登場回の1972年1月8日放送)、関西は35.5%(1973年2月10日放送)を記録しました。

 

主題歌は菊池サウンド

 

主題歌:「レッツゴー!! ライダーキック」
作詞:石森章太郎 / 作曲・編曲:菊池俊輔 / 歌:藤岡弘、メール・ハーモニー

作詞:石森章太郎 / 作曲・編曲:菊池俊輔 / 歌:藤浩一、メール・ハーモニー

エンディングテーマ:

「仮面ライダーのうた」
作詞:八手三郎 / 作曲・編曲:菊池俊輔 / 歌:藤浩一、メール・ハーモニー

「ライダーアクション」
作詞:石ノ森章太郎 / 作曲・編曲:菊池俊輔 / 歌:藤浩一、メール・ハーモニー

「ロンリー仮面ライダー」
作詞:田中守 / 作曲・編曲:菊池俊輔 / 歌:藤浩一

 

関連グッズも大ヒット

 

カルビー「仮面ライダースナック」はオマケのカード欲しさに本体のお菓子を捨てる件が多発し、社会問題化しました。

ブリヂストン自転車「仮面ライダー自転車」は、女の子向けの「マリちゃん自転車」と並ぶ大ヒット商品に。

 

ポピー「仮面ライダー変身ベルト」は当時のちびっ子たちのマストアイテム。

 

「仮面ライダー」キャラクター商品化権料は12億円(当時)。「鉄腕アトム」「オバケのQ太郎」「ウルトラマン」などのそれまでの売上規模を凌駕し、当時の最高記録を叩き出しました。

 

立花モータースの現在

 

「おやっさん」こと立花藤兵衛を演じた小林昭二さんは、「ウルトラマン」のムラマツキャップとしても有名です。仮面ライダーのよき理解者、親代わりとして「仮面ライダーV3」「仮面ライダーX」「仮面ライダーアマゾン」「仮面ライダーストロンガー」まで、昭和のライダーシリーズを支えた最大の功労者です。

 

ちなみに・・・私の住む近所に当時の「立花モータース」のロケ場所がありまして、いまなおビルが健在です(動物病院になっています)。

 

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コメント

  1. mrt より:

    プロレスと特撮の話題が多くて興味深いのでいつも見させていただいてます。
    初代仮面ライダーは、クールが変わるごとに雰囲気やアクションなどが段々変わっていくので98話と長い話数でも飽きることなく楽しめるまさに名作ですね。

    あと、藤岡さんの代役を演じたのは、納谷悟朗さんの弟の納谷六朗さん(クレヨンしんちゃんの園長先生などを演じられた方)です。

    次の更新も楽しみにしてます。

    • MIYA TERU より:

      コメントありがとうございます!また、納谷六朗さんのご指摘もありがとうございます。訂正いたします!

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