昭和特撮「流星人間ゾーン」~1973 ゴジラが出たのに打ち切り?の謎

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今回は、第2次怪獣ブームの真っただ中、特撮の本家・東宝が満を持して放ったTV特撮番組、「流星人間ゾーン」をご紹介します。

 

 

怪獣王・ゴジラがゲスト出演、キングギドラやガイガンも登場する豪華な番組・・・にもかかわらず、全26話と短命に終わり、しかも「尻切れトンボな最終回」が有名な作品でもあります。

 

なぜ、ゾーンはイマイチ、ウケなかったのか?
今回はその謎に迫ります。

 

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「流星人間ゾーン」とは?

 

「流星人間ゾーン」は、東宝映像が初めてTV向けに製作した、巨大ヒーロー特撮番組です。

 

1973(昭和48)年4月2日~9月24日
日本テレビ系列 毎週月曜日 19:00~19:30
企画製作 東宝映像・萬年社

 

東宝映像とは、東宝本社から映像事業部を分社化した会社。初代社長は、「ゴジラ」シリーズの生みの親であり、黒澤明、岡本喜八などの監督作品も手掛けた大プロデューサー、田中友幸氏です。

 

 

当時、1971(昭和46)年に放送を開始した「スペクトルマン」(ピー・プロダクション)、「帰ってきたウルトラマン」(円谷プロダクション)を皮切りに、第2次怪獣ブームが巻き起こっていました。さらに、等身大の特撮ヒーロー番組の「仮面ライダー」(東映)も社会現象的な大人気となっていました。

 

そして、いよいよ怪獣モノの本家である東宝が、TV特撮番組に進出!ということで、この「流星人間ゾーン」は大きな期待を受けてスタートしました。

 

制作陣も豪華で、田中友幸氏が監修、ゴジラ映画の本多猪四郎氏、福田純氏の両監督をはじめ特技監督の中野昭慶氏、後に東宝特撮映画の特撮監督となる川北紘一氏、古澤憲吾氏、小栗康平氏ら、絶頂期の東宝を代表する豪華メンバーが参加しています。

 

「流星人間ゾーン」の差別化ポイント

 

この頃、特撮ヒーロー番組はまさに群雄割拠の戦国時代。本作品は、

 

●地球を守るヒーローがファミリー(家族)
●兄弟3人が等身大のグループヒーロー
●長男が巨大ヒーローに2段変身
●怪獣ではなく「恐獣」
●巨大ヒーローのエネルギーがきれると途中で補充が可能
●必殺技に光線だけでなくミサイル爆破を多用

 

など、さまざまな「差別化ポイント」が設定されていました。

 

そして、なんといっても本作の目玉中の目玉は、

●怪獣王 ゴジラが、初めてTV番組に出演する(ヒーローと共闘する)

ということでした。

 

それも最初からではなく、第4話「来襲!ガロガ大軍団 -ゴジラ登場-」(本多猪四郎監督、脚本は上原正三氏)から。この回は恐獣が2体出現し、ゾーンがピンチ!というところで、ゴジラが助っ人として初登場します。

 

 

要は、ある程度話を盛り上げてからのゴジラ登場。それ程、当時の(今も、ですが)ゴジラの大物ブリは、群を抜いているのです。ましてやこの当時、家庭にビデオデッキもなく「TVでゴジラが観られる」ことは、それだけでプレミアでした。

 

さらに、ゴジラだけでなくキングギドラやガイガンまでが、「悪役スター」としてゲスト出演。

 

こんな豪華なキャストなら、高視聴率間違いなし!・・・となるハズなのですが、そうならなかったのが、実に興味深いところなのです。

 

ストーリーとキャスト

 

ストーリーは、侵略者ガロガの攻撃を受けて壊滅したピースランド星から脱出、地球に漂着した流星人間・ゾーンファミリー(6人家族)が、日本で「防人(さきもり)」一家として平和に暮らしていた。しかし、ガロガは次の攻撃目標を地球に定めミサイルで恐獣を送り込み、侵略を開始。ゾーンファミリーは第二の故郷、地球を救うために戦う・・・というものです。

 

 

主役は3人兄弟で、長男の防人光/ゾーンファイターに青山一也。
長女の防人蛍/ゾーンエンジェルに北原和美。
次男の防人明/ゾーンジュニアは佐藤賢司。

 

 

3人はそれぞれ等身大のヒーローに変身し、長男が巨大ヒーローに二段変身します(初期設定では長女も巨大化する計画があったそうですが、実現せず)。

 

3兄妹の等身大ヒーローといえば、1972(昭和47)年に放送された円谷プロの「トリプルファイター」が有名で、以前紹介した「サンダーマスク」も二段変身です。それだけ当時の「仮面ライダー」人気が凄まじかった証で、二段変身は「仮面ライダーとウルトラマンのいいとこどり」を狙った設定でしょう。

 

父親の防人陽一郎を演じたのは中山昭二(「ウルトラセブン」のキリヤマ隊長)、母親の防人月子は上月佐知子(「ミラーマン」の主人公・京太郎の母親役)、祖父の防人雷太は、天草四郎さんがそれぞれ、演じています。

 

 

主題歌

 

「流星人間ゾーン」
作詞:石狩あきら / 作・編曲:三沢郷
歌:子門真人、少年少女合唱団みずうみ

 

勇壮でハイテンション、子門真人さんの歌唱力が光る主題歌は、特撮ファンの間で「ゾーンは番組はイマイチだけど、主題歌だけは好き」と言われるほどの名曲(笑)。「地球の友よ、握手はあとだ」「すごいあいつ」の歌詞が印象に残ります。

 

作曲は「デビルマン」「ファイヤーマン」「ジャングル黒べえ」(!)で知られる三沢郷さんでした。この方の楽曲はとにかく間奏が素晴らしいんですよね。

 

苦戦する視聴率、イマイチ ウケなかった理由とは?

 

「ゴジラ登場!」が大きな話題となり、視聴率も初期は10%台をキープ。しかし、中盤以降に失速。第21話で遂に6.6%まで落ち込み、「2クール計26話で番組終了」となってしまいました。

 

第4話で登場したゴジラに続き、第5話、第6話ではキングギドラがゾーンと激闘。

 

 

第11話でゴジラが再登場、敵役として新たにガイガンも登場します。ゴジラはその後、第15話、21話、25話にも登場しています。

 

 

それなのに、なぜ・・・。

 

ゾーンがイマイチ、ウケなかった理由はさまざま語られていますが、いくつかの要因が重なったと考えられます。

 

1つは、裏番組の存在。同時刻に、「バビル二世」(NET/現 テレビ朝日)がゾーンよりも3か月早く、同年1月から放送を開始していました。家庭にビデオもリモコンもない時代、一度ついた視聴習慣を変えるのは難しく、多くの子供たちは先に見始めた「バビル二世」を見続けたのでしょう。奇しくもこの2つの番組の最終回は、同じ1973(昭和48)年9月24日です。

 

 

 

そしてもう1つは、いささか子供向けに振られ過ぎたストーリー展開。明朗快活な子供向け番組、としてのカラーが強い本作は、ガロガの地球侵略作戦のズンドコぶりやゾーンと恐獣の対決で「地球を賭けて輪投げやジャンケンで勝負をつけようとする」ことなどがしばしばネタ化され、特撮ファンの語り草になっています。

 

 

さらには、予算がかかり過ぎて財政面がひっ迫とか、特撮スタッフが本編(映画)に忙しく手が足りなくなった・・・とかも言われていますが、やはり最大のミステイクは、「ゴジラにばかり注目が集まり、肝心のゾーンにヒーローとしての魅力が希薄だった」ことにあるのではないかと…。事実、当時オンエアを見ていた人の話では「今週ゴジラが出るなら見る、出ないならまぁいいや、という感じだった」そうで・・・。

 

また、その肝心のゴジラの描き方も、「人類の味方、正義の味方」としてのキャラ。人間やゾーンと意思疎通して、怪獣王としての威厳もへったくれもありません。これは当時の劇場公開作品でも「地球攻撃命令ゴジラ対ガイガン」「ゴジラ対メガロ」など思い切り子供向きにシフトチェンジしていたため仕方のないところですが、あまりに幼稚な展開に「子供だまし」を嫌う子供にも、そしてもちろん大人の特撮ファンからも愛想を尽かされ、映画の斜陽化も重なり動員数が激減していた時期だったのも不幸でした。大ヒールのキングギドラも、「ぬいぐるみを処分するため」という理由でズタボロにやられたり、その扱いはちょっとヒドいです。

 

 

そして、主役のゾーンファイター。当時としては珍しいツリ目のフェイスで、ちょっと冷たく悪役っぽくも見えます。カラーリングが赤ではなくシルバーに青なのも、当時としては異色でした。そして頭でっかちでいささかスタイルが・・・。

 

 

この作品はとにかくミサイルの撃ち合い、爆破シーンが多いのですが、ゾーンの武器も両手に装着したガトリング砲的な「流星ミサイルマイト」!これを撃ちながら突進、パンチを打ち込んでなおゼロ距離で発射しトドメをさします。喰らった相手は血煙と共に爆散する、貫通して背中から血煙を噴出する、中には首がもげて大流血するなどの残虐ブリ。

 

 

毎回、これでもかというくらい執拗に撃ちまくり、その他にも隙を突いて目をもいだり、「ヒーローらしくない」「オーバーキル」「狂気を感じる」戦い方もね・・・「中の人」が、”赤いアイツ”ことレッドマンと同じだったからなんでしょうか(今にしてみると面白いんですけど)。

 

ちなみに「ウルトラマンA」に参加していたスタッフも多いせいか、ゾーンファイターの声にAの声(中曽根雅夫氏や納谷悟朗氏)や恐獣の声、効果音が流用されていたり、そこかしこに「円谷プロ」の匂いがする作品です。

 

 

 

尻切れトンボ、伝説の最終回

 

そしてこの「流星人間ゾーン」の最終回(監督は劇場映画デビュー前の小栗康平氏)も、ある意味伝説。本作が「イマイチ」と捉えられる理由の一つに、このあまりに「尻切れトンボな最終回」も影響していると思います。

 

敵役のガロガとゾーンファミリーの戦いに決着がつかないまま、まったくと言っていいほど「最終回感」のない普通のエピソードが放送され、最後に「次に狙われるのは、いまそこでテレビを見ている君、そう君かもしれないのだ」というナレーションで、「おわり」の文字もなく、唐突に終わるのです。どうせなら1つ前の25話(再生恐獣が4体、ゴジラも登場する回)を最終話にすれば良かったのに・・・。

 

そのため、急な打ち切りで間に合わなかったのでは?既に撮影したエピソードをそのまま使っただけ?続編の計画があった?などの憶測を呼んだのです。

 

しかしながら本作の「失敗」により、東宝映像はTV特撮から撤退を余儀なくされたのでした。

 

ちなみにこの「流星人間ゾーン」書籍や玩具、パズルとか絵本、水筒や弁当箱に至るまでグッズがたくさん出ていました。なので、「番組は見たことないけど、持ってた」ちびっこも多かったんじゃないでしょうか。

 

    

 

 

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コメント

  1. マークン より:

    特撮関係の本に掲載されていた青山一也さんのインタビュー記事によると、裏番組に強力なものがあって(『バビル二世』『ワンサくん』『キックボクシング』)逆転できなくて終わりますと言われたそうです。撮影にも慣れてきたところだったので「えっ、もう⁉」といった感覚だったとか。最終回がいつも通りのエピソードで終わった経緯についてはよくわからないけども番組の打ち上げもなく、静かな幕引きだったそうです。北原和美さん、佐藤賢司さんとは今でも交流している様です。青山さんは現在は家業の海苔専門店を継がれておられます。

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