「軽井沢シンドローム」たがみよしひさ~80年代を象徴する青春群像劇 1981


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「マカロニほうれん荘」と並ぶ、私の人生のバイブル的なマンガ第2弾。

 

「軽井沢シンドローム」たがみよしひさ

ビッグコミックスピリッツ(小学館)
1981年1月号 – 1985年18号
全9巻(愛蔵版全5巻)

©たがみよしひさ/小学館/ビッグコミックスピリッツ


 

それぞれワケありで軽井沢に流れ着いたり土着したりしている若者たちの青春群像劇。

「軽井沢」という、ある人にはハイソな避暑地であり、ある人には単なるド田舎であり、というシチュエーション、当時の世相を反映した「軽佻浮薄」なノリ、後述しますがクセの強いキャラ&ストーリー展開で好みがハッキリ分かれる、わからない人にはまるでわからない作品だと思いますが…

私はものすごく好きなのです。

 


 

主人公の相沢耕平は元暴走族の頭(ヘッド)、総長。

ケンカが強くて運転がうまくて、そしてどうしようもないスケコマシでスケベな、売れないプロカメラマンです。

ミリタリールックでジープに乗っていて、二股三股どころか五股六股当たり前、なのに皆から慕われて頼りにされる2枚目キャラ。

当時中学生〜高校生だった私は無自覚に影響を受けていると思います、とっても。


この作品は、冷静に見ると、かなり実験的な試みをしていることでも知られ、それが面白い!となるか受け入れられない、となるかの分かれ目でもあります。

 

◆特長①シリアスとコミカルのシームレス連動

登場キャラクターも八頭身の劇画タッチと三頭身のギャグタッチで描かれ、初見の人は誰が誰だかわからなくなる、と言います。

シリアスモードな時の作画はとにかく画力が高く、まんまアート作品です。バイク、クルマなどメカニックの描写も凄いです。

◆特長②ルビの使い方が独自

例えば主人公「耕平」は発言者により「おまえ」「あんた」としたり、産婦人科(いしゃ)、誕生日(あのひ)、撮影、探偵社(しごと)など。

この辺の機微が会話に細かなリアリティを持たせていました。

◆特長③同人誌のようなパロディ

ウルトラマンやマグマ大使、ジャイアントロボといった往年の特撮モノや、後半では機動戦士ガンダムなどのパロディが頻繁に登場。

さらにはコマの間や背景などにファンレターへの返答や近況報告が手書きで書かれるなど、楽屋落ち、内輪ウケを大っぴらにやるのも当時の商業誌では斬新でした。

◆特長④音楽(ニューミュージック)との親和性

タイトルに中島みゆきや井上陽水、松山千春などの楽曲タイトルをダイレクトに、時にアレンジして使用。時には登場人物がそのまま唄ったり会話の中で使われたりもしてました。「店の名は・らくか」「とまどうペリカン」「銀の雨」など。私は先にこの漫画(さくひん)の中で知った楽曲(うた)も多かったものです。

 

◆特長⑤チャプター分け、並列同時進行型ストーリー展開

1話の中で7-13のシーン、チャプターに分割されてストーリーが時系列、時に同時進行の形で進む、というのも斬新でした。少年誌の連載でこういったプロット的な作品構成手法は斬新でした。

 

◆特長⑥背景説明なし、会話のみで成り立たせる進行

1話中の各シーンは「どこにいる」という以外の背景説明がなく、登場人物同士の会話だけで進んでいきます。マンガというよりニューシネマや舞台を見ているような感覚が近いのかもしれません。

 

そしてその会話もウェットに富んだギャグや、それぞれのキャラを活かした台詞が特長的で、ベタなのが何より嫌いな私は、そのクールな世界観に非常に惹かれるものがありました。

ただでさえ登場人物が多く、相関関係が複雑に絡み合っており、さらにシリアスモードとギャグモードが入り乱れて、そしてこの同時多発的なストーリーと、台詞だけによる展開…読んでもさっぱり訳がわからん、と言う人の気持ちもわからんでもありません。

 

が、「わからんことないだろ」、と思ってしまうのですよね…何度も読み返していくと、実に深い、のにものすごく軽い、という不思議な浮遊感の漂う漫画(さくひん)です。

 

上記の特長の他にも、谷崎潤一郎ほか文学作品が引用されたり韻を踏んだセリフ廻し、核心を突いた名言、そしてストレートなエロ描写などなど、いちいちツボでした。

タイトルの「シンドローム」は症候群、という用法で当時よく使われた医学用語でした。さだまさし氏の作品にもあった気がします。

「既視感(デジャヴ)」とか「存在意義(レゾンデートル)」とか、このマンガ(さくひん)で知った言葉も多かったですね。

 

ただし、いまの時代に初めて読んだ人がどう思うのか、おそらくは当時の若者の気質や嗜好と、いまの若い世代のソレとはまるきり違う気もするので、おそらくは拒絶感が強いんだろうな、と思うのですけれどもね。

「LOVE」と「LIKE」の違い、とか「無理は主観で無茶は客観」とか、哲学的だったりアイロニックだったりするやりとりは勉強になりました←なんの?

 

私は面白いと思ったし、今でも時折読み返したくなるんですよね。

傑作です。

 

ちなみに…私はアニメ作品とか続編とかはまるで興味がありません。あしからず。

 

個人的には「マカロニほうれん荘」の鴨川つばめ氏が真っ白に燃え尽きなかったとしたら、後にこんな作品を描いていたのかもしれない、的な感覚で好きだったのかもしれないですね、いま改めて並べてみて初めて気がつきましたが。


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