「テイク・イット・イージー」-1986 吉川晃司 3部作 完結編は”渡り鳥風”無国籍アクション


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さて、いよいよ吉川晃司さんの“民川裕司3部作も“完結編。

「テイク・イット・イージー」(1986 昭和61年)をご紹介します。

全2作に比べ知名度も話題性も低い本作ですが、私はある理由から、けっこう好きな作品だったりします。

 


 

●3部作の最終回

 

なぜ、本作が“完結編“かというと、ラストで“主人公が死ぬ“から。これは吉川晃司さんが全2作に引き続き監督を務める大森一樹さん、脚本を手がける丸山昇一さんに直談判し、本作でのシリーズ終了とラストシーンの変更を強く要望したため、と言われています。

 

これには「吉川晃司を唄と映画を股にかける、かつての銀幕スターのようなスケールで育てる」と寵愛して来たナベプロのボス、渡辺晋社長も困惑したことでしょう。

 

しかし、この頃には吉川晃司さんは「音楽一本で勝負したい。余計な活動はしたくない」さらには「アイドルではなくロックミュージシャンとして独り立ちしたい」という意思が固く、結果的に渡辺社長もそれを了承したカタチとなりました。しかし、渡辺晋さんはどうしても吉川晃司+銀幕へのこだわりが強かったようで・・・

 

その代わり…として出された条件は、後ほどご紹介します。

 


 

 

●映画「テイク・イット・イージー」とは

 

前2作の世界観とはまるきり違う、かつての日活 小林旭さんの「渡り鳥シリーズ」をモチーフにした、北海道を舞台にしたアクションありウェスタンあり銃撃戦までありの“無国籍映画“。とはいえ、自らを投影した「民川裕司」の成長物語、というのは変わりません。

物語は昭和記念公園でのご本人のリアルな野外ライブ映像(’85 JAPAN TOUR FINAL)から始まります。

もはや“時代の寵児“となり、「次はニューヨークのMSG公演」となったスター民川裕司(吉川晃司さん)ですが、直前に現地のプロモーターから「まだ世界レベルにない」と公演がキャンセル。マネージャーの柴俊夫さんは声だけの出演です。

ポッカリ空いたスケジュールと心を埋めるため、「宛てもなく北へ」と旅に出ます。

 

「北に行ったら死んじゃうよ」と止める、近所に住む謎の少女つみき役は、本作がデビュー作となるつみきみほさん。本来は「ヒロインオーディション」で10万人の中から選ばれたのですが、まだ14歳の中学生。本作には「妹分」として起用されました。

このキャラは当時、週刊少年サンデーで連載中の大人気マンガ「TO-Y」の“ニヤ“というキャラそのまんま、です。この「TO-Y」にはどこから見ても吉川晃司の“哀川陽司“というカッコつけでズッコけるライバルが登場し、一部で主人公以上の人気を誇っていました。

北海道に降り立つ主人公に、渋いBMW R27 サイドカーを授けるのは、3作連続で登場する宍戸錠さん。本作も出番はこれだけ、セリフなし、そして今回も背景説明などは一切なし、でした。

たどり着いた牧場で、世界挑戦の夢破れて地元に帰って来たボクサー(劇団夢の遊民社所属の上杉祥三という役者さん。どことなく柳葉敏郎さんに似た、いい役者さんで好演)と出逢い、

 

この街がボス(黒沢年男さんwith黄色いグラサン!)に取り仕切られた、自分に似た“夢破れた若者達が住む町“だ、ということを知ります。

そんな若者達のカリスマが、名取裕子さん演じるヒロイン 真弓(マユミ、ですがマキューと呼ばれてます)。夜はナイトクラブのジャズピアニスト、シンガー、そして昼はガラス工芸家として、父親(長門裕之さん)と幼い弟妹達を支えて暮らしています。

 

ちなみに3部作を通じてヒロインはいずれも「歳上の女性」。これは吉川晃司さんをアイドルとして売り出すに辺り、同世代や歳下のヒロインだとファンの女の子達が反発する、というマーケティング的な意味合いと、当時の「生意気」なキャラには歳上の女性とのすこし背伸びした恋愛が似合う、という設定上の狙いもあった気がします。

 

そしてそのヒロインを慕う「つみき」と瓜二つの少女を、つみきみほさんが二役で演じます。

 

裕司はマキューに惹かれ「女なら誰でも自分に着いてくると思ってんでしょ、広島のイモ!」とかリアルな(笑)罵声を浴びせられながらも、やがて恋に墜ち…彼女を東京、世界へと連れ出そうとしてボス(黒沢年男さん)の逆鱗に触れ、手下の若者達を巻き込んでひと波乱を巻き起こす…というのが、本作品のあらましです。

 

バー「K-kan」のマスターに寺尾聰さん、その夫人役に本人のまんまのキャラでアン ルイスさんが出て来るのも見どころ(笑)です。


 

●8mの滝つぼへのダイブ!

 

吉川晃司さんの身体能力を活かしたアクションは前作よりはやや控えめですが、

 

サイドカーによるバイクアクション

路面電車を走って追い越し、

走行中のバスに窓から飛び乗ったり

そしてクライマックスは高さ8メートルはありそうな滝つぼへのダイブ。

このシーンはロングからのノーカットで、スタントマンの吹き替えじゃないとよくわかります。さすがは水球日本代表クラス、見事なフォームです。

 


 

●無鉄砲な夢を追う若者vsドリームキラー

 

本作のテーマは、「自分の力を東京で、世界で試したい」ワカモノと「身の程を知れ、地元で堅実に生きろ」と諌めるオトナの対立構造主人公と既存の価値観との対立、という点は、3部作に共通したテーマです。

 

大森一樹監督と脚本の丸山昇一さんは、当時の吉川晃司さんの“若き反逆者的“キャラクターおよび芸能界、事務所内での衝突や葛藤をモチーフと活かして、それを第1作、第2作とは環境を変えて描いてみせたワケですね。

 

そして、その場面設定に「小林旭のギターを抱いた渡り鳥」風の“日活 無国籍 ウェスタン“を持ってくるあたりが(ほとんど誰にも理解も評価もされませんでしたが)、小林旭ファンでもある私個人的には“絶妙“なのです。

 

第1作「すかんぴんウォーク」回でも解説しましたが、本3部作は日活撮影所で制作されています。「吉川晃司は若いころのアキラだ、吉川晃司に渡り鳥やらしたら面白いんじゃね?」という周囲の声が具現化させた気がしてなりません。

 

「よく作らせてもらえたわ」と大森監督も笑っておられますが、それだけ渡辺晋社長、東宝からの信頼が厚かったのでしょうね。

 

しかしいまになって改めて観ると、黒沢年男さん演じるボスの言ってることは実にもっともであり「誰でも彼でも都会に行きやがって、もっと親や地元を大切にしろ」というのは…いまの高齢化、地方創生の時代ならばこっちが正論になりかねませんね。そういう意味でも、時代を切り取った作品だとも感じました。


 

●サントラは後藤次利さん

 

本作の主題歌は吉川晃司さん初の自作シングルとなった 「MODERN TIME」(作詞・作曲:吉川晃司/編曲:後藤次利)。

カップリングの「永遠のVELVET KISS」(作詞:安藤秀樹/作曲:原田真二/編曲:後藤次利)が挿入歌として使われています。この楽曲はアルバム収録もなく、入手困難曲となっています。

オリジナルサントラ「BOY’S NIGHT OUT」は 3rd.アルバム「INNOCENT SKY」、5th.シングル「にくまれそうなNEWフェイス」からミュージシャン 吉川晃司さんのアレンジャーを務める後藤次利さんが手がけておられます。全編ゴッキーサウンドのゴリゴリあり、メロディアスありの名曲揃いのアルバムです。

 


 

●いろいろ衝撃のラスト

 

2人で街を出る寸前、真弓は「やっぱりあの子達を置いてはいけない」と思いとどまります。「それじゃ俺、カッコつかねぇじゃねぇか」と思い切りビンタをかます裕司。いまなら炎上案件ですね。

 

そして独り帰路につく民川裕司は、サイドカーでカーブを曲がる際にブレーキが効かず、そのままガードレールを突き破り…

「スターってのは、死ぬまで画になんなきゃなんねぇんだ」とつぶやき、草原で絶命。

ブレーキに細工したのは、つみきみほさん演じる真弓を慕う謎の少女。駆け寄る彼女とつみきがオーバーラップします。

 

そして問題はここから。空から謎のUFOが現れ、光に包まれると…

 

場面はニューヨーク、そして吉川晃司さん本人が登場。「フィクションの民川裕司は死に、これからは吉川晃司の物語が始まる」というエンディングなのです。

 

もともと予定していたエンディングを本人の意向で急遽書き直したから、とも思えるトンデモ展開、苦肉の策。「いくらなんでもUFOって…」と大森一樹監督ご自身も笑っておられましたですが…

 

当時、私はこれはこれでアリだと思いました。

 

ほんとに「主人公が死んで終わり」にするとファンの子たちからすると救われないでしょうし、これなら「民川裕司3部作が最後なんだ」と誰でも理解できますもんね。案の定、試写を観た関係者は「なんだアレ」と大騒ぎだったそうですが「ほかにやりようないじゃないですか」という気持ちもわかります(笑)。

 

そしてご丁寧に、作中の真弓の父親(長門裕之さん)は「UFOを呼びたい」発言をしていたり、ちゃんと伏線まで張ってありました。このお方も日活ですね。

 


 

●3部作完結、しかし

 

こうして自らの意思で「民川裕司 青春 3部作」を完結させ、さらにはアイドル歌手からロックミュージシャンへの転向、ナベプロからの独立を直訴した吉川晃司さんに対し、ナベプロの総帥、渡辺晋社長は「もう1本だけ、映画に出ろ」と条件をつけて子会社としての独立を了承しました。

 

それはなんと「イタリアとの合作映画」。「世界の三船敏郎」まで巻き込んだ、グローバルな構想だったのです。

 

この話はまたいずれ…。

 

<関連リンク>

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