日本はなぜ、原子力発電に突き進んだのか?〜正力松太郎とCIA②

※当サイトで掲載している画像や動画の著作権・肖像権等は各権利所有者に帰属します。

ID:1001

正力松太郎氏とCIAとの関係について、前回①で「力道山・プロレス」と「日本テレビ」の共存共栄についてご紹介しました。②である今回は、「正力松太郎」と「原発」についてのお話です。

 

なぜ正力氏は「テレビの父」と共に「原子力の父」と呼ばれるのか。
「日本の原発は読売新聞とが作った」とはどういうことなのか。

 

こちらは同じく有馬 哲夫氏の別著である
原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史 (新潮新書)」
に、詳しく書かれています。

 

スポンサーリンク

正力松太郎氏の野望

 

読売新聞社長・日本初民間放送局、日本テレビ社長である正力松太郎氏。

 

正力氏の真の野望は「マイクロ波通信網」と呼ばれる国内通信網の実現であり、将来有望な市場である放送・通信事業インフラを掌握する事にありました。

 

正力氏はそのための資金として米国から1,000万ドルを借款し、日本政府の承認、そして通信事業に参入するための公衆電気通信の免許を得るため、米国や吉田茂首相らとの交渉を続け、やがて一つの結論に達します。

 

それは「自らが最高権力者、日本の首相になる」という野望でした。

 

そして正力氏はそのためのツールとして、米国が1953(昭和28)年のアイゼンハワー大統領の国連演説以降、推進していた「核の平和利用」、すなわち「原子力発電の西側陣営への普及を軸とした対ソ戦略」への協力を実行します。

 

CIAのプロパガンダ浸透作戦

 

なにせ日本は世界唯一の被爆国であり、「日本国民の核アレルギー」は、西側諸国への原発推進を狙う米国にとって大きな難題でした。

 

加えて1954(昭和29)年3月1日、ビキニ環礁で行われたアメリカ軍の水素爆弾実験でマグロ漁船が被爆した「第五福竜丸事件」が起こります。

 

これをきっかけに、日本国内で反原子力・反米世論が更に高まります(東宝が「ゴジラ」を公開したのもこの年でした)。一つ間違えれば、反米から共産化につながりかねません。アメリカにとって日本は、ソ連・中国と第二次世界大戦後さらに台頭した、共産主義の「防波堤」です。

 

CIAは、旧ソ連との冷戦体制の中、日本に原子力を輸出するための作戦「KMCASHIR」を計画します。その実行役として白羽の矢が立ったのが、正力氏でした。アメリカ政府はCIA諜報部員ダニエル・スタンレー・ワトソンを日本へ派遣。米国のプロパガンダ「平和のための原子力(核の平和利用)」を大衆に浸透させるため、正力と親しい柴田秀利氏と接触します。

 

日本の首相となりメディア網を牛耳りたい正力氏にとって、この取引は渡りに船だったことでしょう。

 

正力氏の原発推進キャンペーン

 

1954(昭和29)年3月、当時改進党に所属していた中曽根康弘氏らにより「原子力研究開発予算」が国会に提出され、翌1955(昭和30)年12月に「原子力基本法」が成立します。この年の2月、正力氏は衆議院選挙に初当選し、国会議員となっていました。

 

そして1956(昭和31)年1月に設置された原子力委員会の初代委員長に就いたのが、正力氏でした。正力氏は1957(昭和32)年4月29日に「原子力平和利用懇談会」を立ち上げ、さらに同年5月19日に発足した科学技術庁の初代長官となります。

 

70歳と高齢の新人議員である正力氏は、首相の座を得るために実績作りを急ぎます。

 

自らが率いる読売新聞、日本テレビを使った大々的な原発推進キャンペーンを次々と打ち、百貨店で「夢のエネルギー」としての原子力をアピールするイベントを開き、反米・反原子力の世論を懐柔すべく奔走します。

 

同時期に米国ではウオルト・ディズニー制作のタイトルからしてズバリな「わが友原子力(Our Friend the Atom)」という原子力推進プロパガンダ番組が放送されています。

1951年から漫画がスタート、1966年からアニメ放送された手塚治虫氏の「鉄腕アトム」はこの影響を強く受けたことは想像に難くありません。

 

こうした一大キャンペーンは功を奏し、日本国内で原子力エネルギーに対する期待が高まり、その安全性を危惧する声は封じ込められて行きました。

 

正力氏とCIAの溝

 

しかし、あまりに自らの欲望を剥き出しに権力を追い求める正力氏に対し、米国側は警戒心を強め、距離を置き始めていました。

 

さらに皮肉なことにアメリカ政府とCIAはこれだけ正力氏を利用しながらも、原発を与えることはありませんでした。その理由には諸説ありますが、日本が核武装することを恐れたから、と言われています。

 

それでも正力氏は諦めず、英国から原発設備を輸入して遂に1957年8月、日本初となる茨城県東海原発に実験炉が完成します。

 

しかし、「安全な夢のエネルギー」と言われた原子力発電に問題が起きます。同年10月、英国ウィンズケール原子炉で大規模な事故が起き、早くもリスクが顕在化したのです。

 

結局、正力氏は首相になるという野望は果たせないまま、1969(昭和44)年に死去しました。

 

しかし、日本における原発事業は正力氏亡き後も、拡大を続けていきます。

 

1970年の大阪万博、オイルショックなどを経て、田中角栄氏という稀代の政治家の手により、利権構造が完成。

 

そして2011年の東北大震災での福島原発事故へとつながっていくのです。

 


 

事の是非はともかく、日本人が知っておくべき史実として、この本を読んでみることをオススメします。

コメント

  1. 大石良雄(本名) より:

    拝啓 サイトヘッド様にはお世話になっておりますが、このサイト様の奥の深さとエキサイティングなアクションに、猛暑の中更に血圧上昇も覚悟のうえで書かせて頂ける事に感謝いたします。
    *「田中角栄氏の言葉=反論があるなら代案を出しなさい」
     全ての結論は、この「対案、代案、反案」の更に科学的根拠に基づいたものを出せるか?によります。自分の現在の本業は「特殊機械のフリーランスエンジニア」ですが、普通では無い特殊なメカがぶっ壊れれば、年中無休24時間体制ですっとんで行き直すと。つまりある程度の実態は解っている者として聞いて頂きたいのですが、サイトヘッド様の言われる「正力某がエージェントとして暗躍していたのは確か」でしょうし事実でしょう。しかしこの正力某が居ようといまいと間違い無く日本は原子力発電に頼っていたでしょう。大変残念ですが。
    *「とどのつまり、どういう方法で発電機を回すか?」
     なのですね。「発電機=米ジェネレーター 英ダイナモ」ですが、一番古くは当然「水力発電=水路式 ダム式 併用式 揚水式 潮力波力等」 次いで「火力発電=主に火石燃料 ガスタービン 一部に地熱(ちねつ じねつ)等」最後に「原子力発電」がありますが、おそらくはアメリカや当時のEC=現在のEU等からの無理難題セールス等で原子力発電を買い取っていたでしょう。サイトヘッド様も先刻ご承知のはずですが、何故「原電=原子力発電が必要なのか?」は、やはり電力需要に発電が追い付かないからですね。では何故「一番環境にやさしくクリーンな水力発電が増えないのか?」は、やはり「ダム建設や水路に費用が多大であり場所も少なく、何より場所が都会から離れ高圧送電線設置費用の増大等が多大なネック」です。
    更に「火力発電は、便利な都会近くに建造できても、何より化石=火石燃料を燃やしてタービンを回すために大気を汚し資源も減らしゴミも出る。結局「消去法として、現在原子力発電しか選択肢が無い」状態です。確かに原子力は恐ろしいもので、スリーマイルもチェルノブイリも福島も、おそらくはご神仏からの警告でしょう。では「原子力は反対っ」と声高に叫ぶ連中にお尋ねしたいのは「何か対案が在るのか?」と。「そんな事ぁ知らねぇ政治の仕事だろう」では話にならない。自分が以前から考えていたのは「全家庭企業での電気の自給自足化」でした。つまり「国や企業や何某が勧める太陽光などの売電」等のケチなくだらない事は即刻止めて、「貴方の家や企業の電気代がタダになる その分浮いたお金でローンの返済早めましょう」とでも言えば良いものを「スケベ根性出して僅かな銭金を電力会社から詐取しようと考えるから狂ってくる」のです。最低限度から出来たら各家庭のほぼ90%を自己発電で賄えたら、状況は大きく変わります。正直ね、どっかの名の通った音楽家が「節電しましょう原電止めよう」なんてぇよくぞ言えたものだとあきれ返っております。そういうアンタは過去「莫大な電気を大喰らいしていた」でしょう? そんな事より何より「対案」を出せと。アイディアを出して下さいよと。今や電気の自給自足は太陽光だけで無くて風力、水素、蓄電池、超小型の水力発電機などなど幾らでも在る。そして本当に足りない分のみを電力会社から買えば、おそらくは「少なくとも原電の新規建設は必要無くなる」はずです。それからまた考えればよろしいでしょう? 最終寿命達成まで後数十年、もちろん巨大なカタストロフやテロルに対して最大の防御態勢確立は当然ですが、幾ら原電が恐ろしくて馬鹿で嫌な奴でも、せっかく大金出して作ったならしゃぶりつくしてやろうというのも一考です。
    今現在の「ただの反対廃電廃炉論議では、その後出てくる電気の需要切迫や料金大幅値上げ」には到底耐えられません。不思議なのは「日本は火山国であり、どうしてもっと地熱発電が普及しないのか?」ももっと突っ込んで調査議論する必要もあります。確かに各個人宅への全ての太陽光や自家発電設備の設置は費用やその後のメンテ等相当に大変でしょう。しかし貴方が反対ならば「対案を出しなさい」と。このサイトヘッド様の場が、何かお国のお役に立てるのなら大変うれしく名誉に思います。    敬具

タイトルとURLをコピーしました