80年代名盤⑤ 「佐野元春」〜1984 4thアルバム「VISITORS」


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1984年にリリースされた佐野元春 4枚目のアルバム「VISITORS」。

 

佐野元春氏は私の中で日本語ロックの原点的な存在です。氏のアルバムは初期三部作が好きなのですが、エポックメイキングな1枚、となるとその次に発表された、このアルバムです。

 

発売当時からその斬新さに対して賛否両論が巻き起こり、彼の熱心なファンですら拒絶反応を起こす人、そんなに好きじゃなかったけどこのアルバムはスゴイと熱狂的に支持する人、とにかくいろんな面で「衝撃作」でした。

 

その衝撃はいまだに尾を引いていて、発売10周年、20周年、という度に記念エディション盤がリリースされますし、30周年となった2014年にはNHK-BSプレミアで当時の制作にまつわるドキュメンタリーまで放送され、このアルバムの曲だけの再現ライブも行われました。

▼VISITORS 30周年記念サイト

http://www.moto.co.jp/Visitors_30th/

佐野元春氏のキャリアの中ではもちろん、日本のミュージックシーンにおいて、ちょっと特別な作品なのです。

 


 

◆大ブレイク中のNY行き

 

このアルバムがリリースされる少し前、佐野元春は大ブレイク中の新鋭ロックミュージシャンでした。

1980年に「アンジェリーナ」でデビュー。立て続けに「BACK TO THE STREET」「Heart Beat」と2枚のアルバムを発表しますが、なかなかセールスには結びつきません。

 

元春氏はラジオDJとして、ライブパフォーマンスがスゴイミュージシャンとして、そして大瀧詠一氏お薦めミュージシャンとして音楽ファンの中でジワジワと話題になっていました。

 

そして1982年に発表した3rd.アルバム「SOMEDAY」が大ブレイク。40公演に渡る1年間のコンサートホールツアー「Rock & Roll Night Tour」は軒並みソールドアウトで、デビュー前の吉川晃司氏や尾崎豊氏はこのツアーに衝撃を受け、プロミュージシャンへの道を決意した、と語っています。

 

その最終公演、東京 中野サンプラザのステージで、ニューヨーク行きが発表されました。

渡米直前に全曲をつなげた画期的な“パーティアレンジ”のベスト盤「No Damage」をリリースしてオリコン自身初の1位を獲得。

佐野元春ブームの真っ只中での単身、ニューヨークでの無期限音楽修行へ旅立ちます。

 


 

佐野元春氏は約1年後に帰国。1984年、日本の音楽シーンに叩きつけたのが、この「VISITORS」です。

 

それまでの自身の作風「ポップなロックンロール」から大きく変化し、中でも「ヒップホップ、ラップを日本で初めて取り入れたメジャーアルバム」と評される本作は、当時の日本のリスナーはどう受け止めればよいのかわからず、戸惑いや微妙な反応、中には「待っていたのはこんなのじゃない」と批判、いまでいうバッシングまで巻き起こり、「混乱」が起きました。

 

テーマはその名の通り、「ニューヨークを訪問者として捉えたドキュメント」。「この時代のNYのカルチャー、ストリートの感性を取り込んだサウンドだ」と言われても、それまでの氏のウリであった美しいメロディラインが排除され、歌唱法も変化したことで、多くの彼のファンは「NYにかぶれておかしくなった」「変になった」と受け止めました。

 


 

◆後のジャパニーズ ヒップホップ アーティストに影響

 

1曲目の「COMPLICATION SHAKEDOWN」から衝撃でした。唄う、というよりマシンガンのようにコトバを並べ立てる、いまなら「ラップ」「ヒップホップ」と理解できますが、当時は「メロディがない」と拒否反応の方が大きかったと記憶しています。

 

2曲目、先行シングルになった「TONIGHT」など、メロディもあり、ポップでキャッチーな楽曲もあるのですが、とにかくこのオープニングチューンの衝撃が大きすぎました。

 


 

◆その後の評価

 

このアルバムは賛否両論さまざまな評価を受けましたが、アルバムチャート1位を記録しました。そして、バージョン違いやA/B両サイドを含めてですが、なんと収録8曲すべてがシングルカットされています。

 

アイドルやアニメソング、子ども向け音楽でさえヒップホップやラップが入り、少しも珍しくなくなった現在。多くの日本語、ヒップホップがその時代時代に寄りすぎた余り古くさく、ダサく聴こえるのに対し、この「VISITORS」だけはそうならず、いま聴いても充分、革新的なのは驚異的です。

 

これは表面だけのサル真似ではなく、音と詩の両面で本質的にそれらの魅力を捉え、掘り下げて制作されたからなのでしょう。

 


 

●佐野元春氏本人の「VISITORS」評

 

いわゆる「MOTO語」なので読んでも意味不明かもですが(笑)、ご本人はこのアルバムをどう捉えているのか、についてご紹介します。ぜひ、あの独特な口調を思い起こしながら読んでください。

 

「このアルバムは確かに、当時マンハッタン、ニューヨークでハプニングしつつあって、商業的になる前のヒップホップ文化の影響下にある。でも、決してヒップホップアルバムを作ろうと思ったわけじゃない。『VISITORS』は僕の中にあるフォークやエレクトリックやスポークンワーズ…、そうしたものと当時のヒップホップが混ざり合っている新しい何かであり、とってもピュアなポップアートなんだ。それと、僕のこれまでのキャリアの中で、もっとも言語的なアルバムでもあるね。僕は、言葉をいかに音楽化していくかに人生の大半を費やしてきている。『VISITORS』では、それまで日本のポップソングや歌謡曲に無かった言葉をふんだんに入れて、日本語ポップ音楽の中における言葉を解放していった。そうした意味では「エレクトリックなスポークンワーズアルバム」であるとも言えるね。」

 

「リリース30年を経て、この作品はまだ有効だと信じている。評価は聴き手に委ねたいと思う。」

 


 

◆「VISITORS」の価値とは

 

ヒップホップ文化がどうとか、ラップがどうとか、というのはハッキリ言って私は興味もないですし、まるで好きではないので知りたいとも思いません。

 

ただ、前にご紹介したYMOしかり、「誰もやってないことに挑戦して、そして売れる」そして「それまでの自分の支持されているところを捨ててまでやる」という、フロンティアスピリットと勇気という部分で評価します。

もっと言えば「その上で先達への探求とリスペクトを忘れない」という部分も含めて、です。

 

その点において、やはりこのアルバムは画期的であり、衝撃的であり、それ故に30年も経過しても尚、多くの人を魅了するのでしょう。

 


 

■VISITORS 佐野元春
1984年5月21日
EPICソニー

プロデュース/作詞/作曲/アレンジ 佐野元春

【収録楽曲】

1 COMPLICATION SHAKEDOWN
2 TONIGHT
3 WILD ON THE STREET
4 SUNDAY MORNING BLUE
5 VISITORS
6 SHAME-君を汚したのは誰
7 COME SHINING
8 NEW AGE

 


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